この笑顔を忘れない
そんなクルー達の様子を見て、
ウソップだけは手を止めようとしなかった。
「うっうめぇよ!! やっぱりサンジの飯は最高だ!!!なぁお前等!!」
クルー達に必死になって声をかけるウソップ。
その様子をサンジは黙って見ていた。
それを怒っているのと勘違いしたウソップは余計に激しく食べ始めた。
「お前等も食えよ!! サンジの飯は世界一なんだぞ!!」
「・・・・そっそうだぞ!!!
サンジの飯はっサンジの飯は最高だ!!!」
チョッパーもウソップに続いて褒めながら食べ始めた。
「おぉ!!!さすがチョッパーだ!! こいつ等とは格が違ぇ!!」
「そっそうだぞ!! 俺にはちゃんと分かる!!
美味いぞっそれもとびきりだっ!!!!!!」
だが、チョッパーの目からは涙が溢れ出ていた。
ナミやロビンはただただ驚いていた。
今までサンジの飯食べたことのないフランキーは黙っていた。
そしてルフィとゾロは、
「「まずい。」」
「おおおおぃ!!!!ルフィ、ゾロ!!!」
「ウソップお前の舌おかしいんじぇねぇか?」
「そんなことはねぇ!!!!! この飯は美味いっ!!」
ハッキリと「まずい」と口にした二人に向かってウソップは怒鳴る。
チョッパーは最初はウソップの話に乗っていたが、今はただ泣いている。
その様子にナミは不安になった。
そして、サンジは静かにテーブルへと歩み寄った。
「ササササンジ君、きっと空耳だ!!!
おお落ち着くんだ。うぉー美味い美味いぞぉーっ!!!!」
「いや、まずい。」
「ぅおいコラロロノア黙ってろ!!!!」
「ゾロ、」
サンジはダンッとテーブルに勢いよく手をついた。
その行動にウソップだけが叫び声を上げた。
「なぁゾロ、この俺様が作った今日の飯は美味いか?」
ウソップは必死になって美味いと言えというアイコンタクトを送っていたが、
ゾロはそんなことを無視してハッキリと言った。
「まずい。」
ウソップはもうこの世の終わりのような顔をしている。
チョッパーは泣き続けている。
ナミもいつもと全く違う味の料理を見つめた。
ルフィやロビンやフランキーは静かに成り行きを見守っている。
そしてゾロは真っ直ぐにサンジを見返した。
「そうか、不味いか。」
「ぇ・・・」
「「「「・・・・・」」」」
サンジは笑った。
いつものように飯が美味いと答えた時のように。
ただ「美味い」という言葉を「不味い」と変えて。
「お前等に大事な話がある。
その飯は置いといていい、甲板に出てくれないか?」
クルー達はテーブルの上に食べかけの料理を残し、甲板に出た。
サンジが食事中にその場を離れるように支持したことに全員が驚いていた。
ただごとでは無いような雰囲気を肌で感じ取り全員がサンジを見つめた。
そしてサンジは全員に話しはじめた。
「俺はここで船を下りる。」
サンジ以外の全員の時間が止まったような気がした。