この笑顔を忘れない
「サンジーーーーーーー!!!腹減ったぁーー!!」
「もう少しなんだから大人しく待ってろっ!!!」
「早くしろーーーー!!!!」
「早くしろーーい」
「がんばれサンジーー!!」
あの晩の記憶が薄れ始め、普段どおりの忙しい日々。
今日も昼飯の準備の最中に待てない面々がわんわん五月蝿い。
「こんの、くそ野郎共外出てろっ!!!!」
いつもの通り蹴り飛ばす。
こんな日々を俺は結構楽しんでる。
俺の幸せだ。
俺の幸せは飯を作ることじゃない。
美味そうに食ってくれる奴が居て初めて幸せを感じる。
この船のクルーは全員が美味そうに笑顔で食べる。
毎度毎度騒々しい食卓ではあるが、俺は大好きだ。
それに、こうして待ちきれなくなるルフィやウソップ、チョッパーも邪魔だとは思うが、
楽しみにしててくれることが嬉しくてたまらない。
この船のコックをしてること。
それが今の俺の誇りだ。
大方の料理を終え、まずはレディ達をご案内する。
そして野郎共もちゃんと座らせいつもの言葉を、
「召し上がれ。」
「「「「「「いただきまーす!!!」」」」」」
「うめぇーーーー!!!!」
「うまいっっ!!!!」
「うっめーーーーー!!!」
「美味しいっ!!」
「美味しいわ。」
俺は全員の顔を見る。
そして俺は追加の料理を作り出す。
麦わら一味の旅はいつだって派手だった。
ウォーターセブン、サイファーポール、メリー号。
今回ばかりは全員が体の傷だけじゃなく心にもダメージがくるものだった。
全員の気持ちが残るはウソップだけだ、と思ったとき、俺の体に異変が起きた。
だが何故だか俺はひどく冷静にその変化を受け入れた。
新しい船の完成までそれぞれ別行動を取った。
それがありがたかった。
俺は皆に料理を作ってあげることが出来ない。
俺は味覚を失ったから。