【どうぶつの森】さくら珈琲
両手でそっと彼の手のひらを包みながら、これを伝えることが精一杯だった。
―――もういいから、あなたがいるだけで、それだけでいいから。
わたしの一番伝えたかったことは、それだけだった。
弱くても、格好悪くても、かまわない。
わたしだって弱いから、それもあなたといてよくわかったから。
彼の赤い瞳も、まるで雫を落としたかのように潤んだ。
「こんなオレと、ずっと一緒にいてくれますか?」
わたしはうなずいた。その拍子に、わたしも我慢していた涙がぽたりと落ちた。
村中に歓声が響く。隣村に伝わるんじゃないかと思うくらい大きな祝福が、わたしたちを包んだ。
わたしは涙が止まらなかったけれど、同時に笑いも止まらなかった。
誰かを好きになって、その人が自分を好きになってくれる……ああ、それって、なんて幸せなことなんだろう。
心から、わたしはそう思った。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗