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【どうぶつの森】さくら珈琲

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50.さくら珈琲


『お母さんへ

 来週あたり家に帰ります。
 今度は、前に書いたように暮らすんじゃなくて、えっと……会わせたい人がいるんです。
 その人はなんていうか、というかヒトと呼んでいいものか……。
 どこから話せばいいかわからないから帰ってから全部言います。

 でも、わたしが初めて好きになった人です。
 すごく良い人です。彼のおかげでたくさんのことを教わりました。
 でもお父さんには「覚悟しといてね」と伝えておいてください。
 きっと失神しちゃうから。
 それじゃ、お元気で。

 さくら』



 前と同じようで、また新しく変わった日々が始まった。
 わたしたちは今日も「ハトの巣」にきて、いつもの席で一緒に並んでコーヒーを飲む。
 変わらない、何より愛しい光景。
 わたしは物思いに耽りながら、彼の顔を見つめた。

「ん? 顔になんかついてるー?」
―――いや、お父さんになんて言おうかなと。

 なにしろネコだもん。まさか娘がネコの彼氏を連れてくるなんて思わないよね。

「あはは、超緊張するね! オレ、法学関係を勉強したから、そこアピールするよ!」
―――法律に詳しいネコって余計驚くでしょ……。

 マスターも楽しそうに「クルックー。結果聞かせて下さいね」と言った。
 そのとき、わたしは机の上に置かれたメニューに気がついた。

―――マスター、メニュー置くようになったんだね。
「春限定です。」

 確かに普通のコーヒーと、春限定コーヒーの二種類しか書かれていなかった。
 春限定コーヒーの名前は、『さくら珈琲』。
 注文すると、桜の花びらが浮かんだほんのり甘いコーヒーが出された。
 わたしたちは同じことを思い出した。

「これ、さくらと出会った日に飲んだよね」

 ここで彼と会って、一緒に過ごす時間が長くなって、それが恋になっていて。
 それから、いろんな人と出会った。そして別れ、また出会って。
 本当に、いろんなことがあった。辛いこともたくさんあったけれど、今のわたしは心から幸せだった。
 この村でこれからどんなことが起きて、誰と出会うか、それがとても楽しみだった。

―――家に帰るついでにバニラに会いたいな、いいかな?
「いいね! オレも小説家さんにインタビューしたいな!」

「さくらー! 邪魔しにきたぞー!」

 リクがとまとを引っ張りながら入ってきた。後ろから、笑いながらヴィスがついてくる。最近、彼は前より明るくなったように見える。


 ここが、わたしたちの村。
 毎日が同じようで、少しずつ変わっていく場所。
 小さな日々の中に、新しい発見のある場所。
 よかったらあなたも、この村に来てみない?
 おすすめの場所はこの小さな喫茶店「ハトの巣」。今なら春限定のコーヒーも飲めます。
 ほんのり甘くて、苦くて、優しい恋の味。その名前は。

「さくら珈琲」







THE END.