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【どうぶつの森】さくら珈琲

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「きゃぁ、今日は豪華ですねぇ!」

 今日のお昼ご飯を見て、とまとが言った。山盛りのうな重だ。
 さっき起きたばかりなので、とまとの髪は重力を無視してあらゆる方向に跳ねている。いつみても、ある意味の芸術である。

「どうしたんですかぁ? 金のなる木でもなりました?」
―――そういうんじゃないけどさ。ところで、今日は一歩も外に出ないでね。
「なんでですかぁ? でも、もし監禁されてもこんなご飯なら悪くないなぁ」

 そのとき、ドアがノックされる音がした。開くとそこにはたぬきちさんが立っていた。珍しい来客だ。

「こんにちは! 食事中だっただなも?」

 急にとまとは顔色を変えて二階へと戻っていった。おかしいな、たぬきちさんはとまとのパジャマスタイルをいたく気に入ってるのに。
 当のたぬきちさんはにこにこしながら言った。

「やっぱりとまとちゃんも、ヒトの男の子だと意識するんだもね」
 
 そのときすぐに全てを悟った。後ろには予想通り、朝の魚釣りの男の子。やっぱりね。相変わらずのポーカーフェイス。
 そして階段を下りる音に振り返ると、とても凝ったヘアスタイルにグレースブランドの服を着たとまとがいた。そんな街でしか手に入らないような服、いつ買ったんだろう……。
 すっかり可愛くなったとまとを見て、たぬきちさんは嬉しそうだ。

「とまとちゃん、おめかしした姿もキュートだなも〜! あっ、そうそう、紹介するだも。新しい住人のヴィスくんだも!」

 ヴィスと呼ばれた少年は小さな声で「よろしく」と言うと、浅く頭を下げた。

「よろしくね!」

 とまとが張り切って答えた。早くもクールな彼に夢中になったようだった。

「ヴィスくんのアルバイトはもう済んでいるだも。ところで、さくらさん……」

 ぎくっとした。思わず冷や汗が流れる。

「今日のぼく、何か気づかないだなも?」

 うわあああ、来た来た来た。今日は誰とも会わないって決めてたのに……早くも予定を狂わされた。こうなったら、思いつきで乗り越えるしかない。

―――え、え〜と……目の周りのクマが素敵です……ね?
「これはクマじゃなくてタヌキ特有の模様だもー!! その調子じゃ、今回の×ゲームも怪しいだもね〜。
 じゃ、一つ屋根の下に男女が同居なんて大変だろうけど、まぁヴィスくんは見た感じこんな子だし大丈夫だもね」

 ずいぶん失礼な言い方な気がしたが、ヴィスは気にも留めてないようで相変わらず無表情だ。
 たぬきちさんは「がんばってね〜」とのんきに言い残すと、店へと戻っていった。

「さくらさん、今のなんですかぁ?」
―――別に、たぬきちさんをほめただけだよ。
「ほめたにしては、かなりよそよそしかったですよぉ」

 わたしは嘘をついてはいない。気にしないように促してし、とまととヴィスをリビングに置いて、わたしはお茶を淹れた。
 ヴィスは予想以上に無口だったが、食欲は旺盛で、わたしが用意した食事をあっという間に平らげてしまった。その間、とまとが懸命に質問をしても首を縦か横に振るだけ。聞いているかすら怪しいが、そのミステリアスな雰囲気が余計とまとにハマったらしい。

「ねぇさくらさん、ヴィスくんに村を案内してあげましょうよぉ!」
―――いや、二人でいってきて。今日は外出したくない。
「だってあたしが連れていくと道に迷っちゃうじゃないですかぁ!」

 まあ、当たってる。ヴィスは案内してほしいのかと意見を求めたが、やっぱり人形みたいに無口無表情で何を考えているか読めない。
 どんなに断ってもとまとは諦めてくれず(わたしとヴィスが親密になるという心配はないのだろうか?)、無理矢理外に出されてしまった。
 今日ほどわたしが目立つ日はないっていうのに。

「あ、さくらさ〜ん、今朝ぶりですね!」

 早速、バニラがやってきた。そしてすぐ後ろにいるヴィスに気づく。

「たぬきちさんから聞きました。ヴィスさんですね、はじめまして! ヴィスさん、今日は『ホメる日』なんですよ! 会う人会う人ほめあっていく素敵なイベントなんです」

 とまとは、何の疑問を抱かずにこのイベントを受け入れた。

「わぁ、それって楽しそう! バニラ、かーわいー!」
「わーい! とまとさんもかーわいーですね!」

 端から見たなとっても奇妙な光景で、ヴィスは訝しげに見つめている。「わかるよ」と微笑みかけたら目をそらされてしまった。う〜ん、難しい子だなぁ。

「次はさくらさんですよっ!」

 バニラに言われて、自分の番が回ってきたことに気がついた。ええっと、ど、どうしよう……。

―――その、バニラ、し、白いね。

 見たまんまの感想を述べたわたしに、場は一気に凍りついた。だって、他に何を言えばいい? 確かにバニラはかわいい。けれど別に、バニラは昨日今日突然かわいくなったわけでもなく、わたしにとっては当たり前の日常に過ぎない。
 礼儀正しいバニラは、ちゃんと愛想笑いをしてくれた。思いっきり苦笑いに近いだけれど。

―――ご、ごめん、精一杯考えたんだけど……。

 とにかく、まだ大丈夫だ、一番面倒な村長さんに会ってないのだから。

「さくらよ、見つけたぞい」

 どうしてこう、都合良く散歩してるかなぁ? もしかして、イベントが始まるなり真っ先にわたしを探してたのだろうか。
 それにしても今日の村長さんは奇抜的だった。顔が真っ白になるほど化粧を塗りたくっている。まるでピエロだ。
 そして体をくねくねさせて言った。

「さくらのためにがんばったのよん、どうじゃぁ?」

 多分今がほめ時だ。で、何をほめるべき?
 いきなりとまとが叫んだ。

「村長さん美しいですねぇ〜! その口紅新色でしょぉ? 欲しかったんですよぉー!」

 先を越されたが、ヒントは得られた。そうか、これは美になるのか。このまま便乗しておこう。

―――そ、村長さん、とってもきれいですね……。
「おお、二人ともよくわかってるのぅ。しょうがない、今回の×ゲームはナシじゃ。さて、次は新入り! ワシは甘く見んぞ!」

 これにヴィスどう反応するかわたしも気になった。ヴィスは、まるでにらみつけるかのように真剣に村長さんを見つめている。
 そして眉間にしわを寄せ、不愉快そうにこう言った。

「ほめるとこ、ないし。」