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【どうぶつの森】さくら珈琲

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 今回の×ゲームは『村中の草抜き』だった。
 ある意味、ヴィス尊敬する。前回わたしが言った「今日もシワシワですね」よりひどかった。

「ヴィスくん、あたしも手伝うよ! さくらさんもいいでしょぉ? こんなの、とても一人じゃ終わりませんよぉ!」

 最近手入れを怠っていたせいか、村の至るところに雑草が生えている。これじゃ三人でせっせと頑張ったところで、とても朝までには終わらない。辺りはすっかり日が落ちて、闇に包まれてしまった。
 ヴィスみたいに思ったことを素直に言えるのは良いことだけど、時と場合によっては悪いことにもなる。
 まぁこのイベントは、本来お世辞を言い合うのではなく、普段気づかない相手のいいところを見つけあうために作られたものだ。村長さんも機嫌を直したらそのことに気づいてくれると嬉しいんだけど……。もちろんちゃんと主張したけれど、やっぱり×ゲームは取り消しにならなかった。

「よぉさくら! 大変そうだな」

 振り返ると、そこには久々に見かけるロボがいた。

―――ロボ、夜遊び帰り?

 あまりにもすんなり話しかけてきたものだから、少し拍子抜けしてしまった。

「まあな。新入りがすごいことしでかしたんだって?」
―――うん、ヴィスね。
「あいつすげえよな、なんだかクールガイって感じでよ。特に釣り姿には惚れ惚れだぜ! いつかリリアンやピースも交えて釣りしてぇな〜」

 よかった、どうやらあの二人との関係も良好らしい。ひとまず安心した。そしてロボは向こうにいるヴィスに何か話しかけ、少し草抜きを手伝ってくれてから、去っていった。
 ひとまず一見とっつきにくいヴィスに、友だちが出来たみたいで良かった。ただ、こっちの問題は解決していない。いつまでたってもこの膨大な量の雑草を抜ききれそうにない。

「もう明日にしませんかぁ?」

 とまとが憔悴しきった顔で言った。

―――でも村長さんが今日中にって……まぁ日付はもう変わってるけどね。

 ヴィスは責任を感じてるのか、さっきからずっと黙々と草を抜き続けている。うーん、でももう時間も遅いし、この辺で切り上げてまた今度にしようって提案しようかな。
 かがんでばかりで腰が痛くなってきたし、何より朝早く起きてしまったからとても眠い。さっきからあくびが止まらない。
 すると

「あの〜」

 と、か細い声がした。

―――ん? 何?

 とまとの方を振り向く。とまとは眠そうに目をこすっていた。

「なんですかぁ?」
―――あれ、今何か言わなかった? ヴィス?

 ヴィスも首を振る。あれ? 気のせいかなぁ。

「さ、さ、さくらさん……」

 とまとが、さっきのうとうととした顔とは打って変わって、目を思いっきり見開いてわたしの後ろを指した。
 そのとき、背中が急にぞくぞくした。冷たい……服の中に急に氷を入れられたみたいな。これは絶対、気のせいじゃない。

「あの〜、聞いてますか〜?」

 とまとでも、ヴィスでもない、聞いたことのない声。
 おそるおそる振り返ると、そこには、三角の布を額につけた丸い誰かがいた。体が青白く、向こうの景色が透けている。
 さらにもっと勇気を振り絞って下の方を見ると……足が、なかった。


 村中が起きてしまうんじゃないかと思うほどの、大きな悲鳴をあげながらわたしたちは逃げた。
 誰かの恨みを買った心当たりもないのに、このオバケはわたしたちをどこまでも追いかけてくるのだ。

「待って下さい! 待って下さーーーい!!」

 オバケが叫び続ける。怖い。怖すぎる。

「ささささくらさん!! オバケが待ってって言ってますよぉ!?」

 とまとが走りながら言った。

―――ま、ま、待てるわけないでしょ!?

 足がないくせに走るのが速い。いや、飛ぶのが速いと言うべきか。あっという間に先回りされて、わたしたちは驚いて転んでしまった。

「はぁはぁ……何も……はぁはぁ……しませんから……」

 呼吸をしていないのに息切れをしているオバケ。そのせいで余計恐ろしく見える。

「ぎゃあああっ、やだやだやだ〜!! おかあさ〜ん!!!」
「……!!!」
―――きゃああああ!!!

「だから話を聞いて、ぐえっ」

 オバケが急に視界から吹っ飛んだ。誰かがとび蹴りを食らわせたようだ。
 オバケって、触れるんだ……そんなことをぼんやりと思った。
 そしてその救世主は、なんとみしらぬネコさんだった。

「うわっ、この変態、なんだかひんやりするー。ほんとのオバケみたい……」

 みしらぬネコさんが踏みつけたオバケをつつきながら言った。
 そしてわたしは、自分でも信じられない行動に出た。思わず、彼に抱きついてしまったのだ。
 すごく、すっごく怖かった。死ぬかと思った。なのにこの人の顔みたら泣きそうなくらい安心した。どうしてか、わからないのだけれど……。

「ちょっとさくら、うれしいんだけど……ギャラリーがいるんだよね!」

 後ろでとまとがさっきとは違う理由できゃーきゃー騒いでいた。
 みしらぬネコさんはからかうように言ったが、彼の胸から聞こえる音が大きくて。それにわたしもなんだか恥ずかしくなって、慌てて離れる。

―――た、助けてくれてありがとう。
「だってあんな大きな声あげてればねー! オレ、さくらがあんな声出してるの初めて聞いたし!」
―――まぁハトの巣で悲鳴をあげることはまずないしね。
「あ、キミ、ヴィス?」

 みしらぬネコさんはヴィスに話しかけた。ヴィスは無表情だが、何故かにらんでいるようにも見えた。
 二人は沈黙の中、何故か見つめ合っている。え、どうして二人は黙っているんだろう。そもそもどういう意思疎通をしているんだろう、テレパシー?
 そして、先に口を開けたのはとまとだった。

「みしらぬネコさん、あのぉ」
「ん?」
「……オバケ、踏んだままですぅ」