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【どうぶつの森】さくら珈琲

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 オバケの存在すらさっきまで信じていなかったのにいきなりひとだまと言われてもイマイチ実感がわかない。
 とりあえず虫取りアミを持った。あのオバケが、それで捕まえられると教えてくれたからだ。

「五個だってね。朝までに終わるかな?」

 みしらぬネコさんがのんきに言った。とまともきゃっきゃと笑いながらヴィスにくっついていて、すっかり肝試しムードになっている。
 さて、どうしたものか……そう思っていると、右の耳元で声がした。「たすけてぇ」

―――もうその手には乗らないよ。ベタなことしないの!

 てっきりからかってるんだと思ったけれど、みしらぬネコさんは「何?」と不思議そうに言った。そもそも彼は、私の左側に立っていた。

―――……え。

 わたしの顔の横を、青白く燃えるひとだまが浮かんでいた。口もないのに「助けて」と聞こえる。もうそれ以上何も聞きたくなくて、反射的にアミを振ってしまった。
 それは、手に持つととてもひんやりしていた。燃えているのに氷みたいだった。しかもやわらかくて、潰してしまいそう。この感触、一生忘れられそうにない。

「さくらさんすごいですぅ、きっとオバケになってもこれでやっていけますよぉ!」

 とまとがほめてくれたけれど、わたしはこんな仕事、絶対にやりたくないと思った。
 二個目と三個目は同じ木に引っかかっていた。これはみしらぬネコさんがよじ登った。さすがネコだけあってフットワークが軽い。
 最初は冗談っぽく笑っていたけれど、わたしと同じく、あれに触ったとたん顔色が変わった。

「小さい頃、手にくっついてたナメクジを思い出すよ……」

 それは確かに、良い例だ。近いものを感じる。
 四個目は、その辺りに漂っていたのをとまとがキャッチした。もちろんこれも言うまでもなく、同反応。

―――結構スムーズに捕まったね。残り一個だよ。

 そのとき、ヴィスがわたしの腕を引っ張った。

「そこ」

 なんと、川にひとだまが流されているじゃないか。か細いながらも断末魔の叫びをあげている。
 ヴィスは釣りざおを取り出すとカウボーイのようにぶんぶん振り回した。釣り糸は長く長く伸び、向こうに流れるひとだまに引っかかった。
「いでで」と騒いでるが、お構いなしにそのままかごに押し込んだ。
 そしてあの笑顔を見せる。そっととまとの方を盗み見ると、また彼への熱が上がったみたいだ。

―――さすが天才釣り師!

 わたしがからかうと、顔を赤らめてそっぽを向いた。なんだ、結構かわいいところあるじゃん。
 とりあえず、なんとか五個手に入ったので、急いでゆうたろうのところへ向かった。

「わぁ、助かりました! 本当にありがとうございます!! それでは、このへんで……」
―――あれ、お礼は?

 今にも文字通り消えようとしているゆうたろうに、声をかけると、彼はぎくりと肩を震わせた。といっても、体が丸いのでどのあたりが肩なのかもわからないのだけど。

「えぇ、本当にこの量やるんですかー!?」
「なんでもするって言ったじゃん! じゃ、そういうことでよろしくね」

 みしらぬネコさんが容赦なくはっきりと言うと、ゆうたろうは「かなりありますよ……」と辺りを見回しながらため息をついた。どういう手段を使うのかはわからないが、朝までに一本残らず綺麗に抜いてくれるそうだ。わたし達は彼に任せて、安心して帰ることにした。