【どうぶつの森】さくら珈琲
それからの数日間、わたしはバニラと話すタイミングを逃した。いや、自分から避けてしまったんだ。
村でたまたま彼女に会っても、まともに顔を見れなかった。
それがどれだけ彼女を傷つけているかよくわかってる。
でも、なんて言っていいかわからなかった。
初めて別れた友だちのことを思い出そうとした。正直に言うと、ヒトだったかどうぶつだったかすら覚えていない。
そのときは一生忘れずに、頭に刻み付けておこうと思っていたのに。なのに、わたしはその子の名前も姿もすぐには思い出せなかった。
そういうものなのだろうか、出会いと別れというのは。忘れないようにと頑張っても、いつかは繰り返すうちにかすんでしまうのだろうか。
あれからわたしは毎日ほとんど眠れていない。バニラが決断出来たのか、それだけが気がかりだったから。
その手紙が着たのは、花火大会当日の朝だった。
『さくらさんへ
今日、村を出ようと思うんです。また泣いてしまいそうだから、皆さんには黙ってこっそり出て行きますね。
この村は本当に温かくて、優しくて、わたしの一番の宝物でした。
そして、さくらさんはこんなわたしに一番優しくしてくれた人でした。
最後まで本当にありがとう。
嫌なお別れになってしまってごめんなさい。
本当に、本当にありがとう。
さようなら。
バニラ』
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗