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【どうぶつの森】さくら珈琲

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 曇り続きから明けた、よく晴れた朝。夜の花火大会の日程を告げるアナウンスが響いていた。

 そんな中、わたしは走り続けた。

 こんなに叫んだのも走ったのも、生まれて初めてだった。
 汗と涙が混ざったものがわたしの顔を幾筋も伝っていく。
 喉が枯れて、汗だくで、格好悪くて、それでも止められなかった。

―――バニラ! 待って!! ねぇ、バニラ!! バニラー!!!

 ちょうどバニラは、大きな荷物を抱えてタクシーに乗ろうとしているところだった。
 さぞかしびっくりしたはずだ。ぐしゃぐしゃの顔をしたわたしと、後ろには村の住人たちが勢ぞろいしているのだから。早朝ということもあり、パジャマ姿の住人もいた。

「どうして!? わ、わたし……こっそり出ようと、思っていたのに」

 バニラはわたしたちを見てとても驚き、そして言い終える前にどんどん涙がこぼれていった。
 ロボが息を整えながら言った。

「みずくせえことすんじゃねえよ。びっくりしたぜ。
 さくらが朝からバニラバニラーって叫んでるんだからよ、すっかり起こされちまった」
「ほんとほんと、おかしくなったと思っちゃったよぉ」とラッキー。

 バニラはわたしの方を見た。

―――バニラ、何も知らずに余計なこと言って本当にごめんね。
「いえ、さくらさん、わたしの方こそ……」
―――けどね、わたしはバニラが決めたこと、親友として誇らしくもあるよ。
    がんばってよ、バニラ。いつでも、帰ってきていいんだから。ここは、バニラの村なんだから。
「そーですぅ! ここはみんなの村ですからねぇ!」

 とまとが泣き顔のまま、にっこり笑った。
 バニラはもう泣くのを抑えられないみたいで、白い毛をいっぱい濡らしてか細い声で言った。

「皆さん、本当に、ありがとうございます……絶対また帰ってきます、絶対に。」


 彼女がこの村から去っていくのを、わたしたちは見えなくなるまで見送った。
 気がついたら、この場にいる誰もが、バニラと同じように泣いていた。ロボなんて泣くのを隠すためにハンカチでずっと顔を押さえていたけれど、かえって目が赤くなって逆効果みたいだった。
 そして、今度の休みはみんなで街に行く計画も立てて。
 いくら都会と言っても、こんな大人数で泊まれる場所、あるのかなぁ……。


 別れというものは、悲しい事ではないと思う。
 一つの区切りになるけれど、もしかすると、忘れてしまったり、もう会うことがなくなってしまったりすることもあるかもしれないけれど……。
 だけれど、遠く離れても、ずっと続いていくものがある。それを確かめるために、別れはあるのかもしれないな。