【どうぶつの森】さくら珈琲
変なお店だったなぁと口々に言いながら、わたしたち三人は博物館へと向かう。
こんなありふれた絵でも芸術的価値があるんだろう。わたしには全然わからないんだけど。
ラッキーが部屋に飾ってる落書きの方がずっと面白いと思うけどなぁ。
しかし、持って行くと予想以上にフータさんは興奮して見せた。
「これは……! よくみる名画じゃありませんか! 本当にいいんですか!?」
フータさんはどんな額に入れようとばたばた走り回っていた。
うーん。芸術ってわからないなぁ。
そのとき、上から珍しくフーコちゃんが降りて来た。
また長いこと上の階で星の観察をしていたようで、羽がぼさぼさになっている。
―――フーコちゃん、こんにちは。元気?
「あ、さくらさん! 皆さんもおそろいで。どうしたんですか?」
「こんにちは〜。イナリ家具ってところでさくらさんが絵を買ったので、持って来たんですぅ」
フーコちゃんは微笑んで、礼を言った。しかし空に浮かぶもの以外には興味ないのか、絵についてはフータさんほど食いついてはこない。
と、思ったら。いきなり目をカッと開いた。あの驚いたときにするしぐさだ。
毎回この動作にはこっちもびっくりしてしまう。
―――ど、どうしたの?
「お兄ちゃん! これ!」
舞い上がっているフータさんに叫ぶフーコちゃん。
「おぉっ! フーコにもついに芸術に興味が……」
「お兄ちゃんこれ、ガンサクよ!」
ガンサク? これも初めて聞く言葉だった。今日は知らない言葉をたくさん聞く日だ。
どうしてフーコちゃんがこんなに憤慨しているんだろう?
ピンとこないわたしに、フーコちゃんは更に言った。
「さくらさん! これ、ニセモノですよ!」
―――え!?
フーコちゃんが指差す先……絵の裏に小さく「MADE IN イナリ家具」と書いてある。どうして気づかなかったんだろう!
「さくらさん、これどこで手に入れましたか!? もしかしたら店員はキツネじゃありませんでしたか!?」
―――うん、キツネだった。
「じゃあイナリ家具のつねきちですね……こうやって、村をまわってガンサクの芸術品を売りつけているんですよ。今頃、お客さんが見つかったから村を出ようとしているんじゃ……」
こうしてはいられない。わたしたち三人はすぐに駆け出した。
作品名:【どうぶつの森】さくら珈琲 作家名:夕暮本舗