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【どうぶつの森】さくら珈琲

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29.家出少女とまと

 
「なんでそういうことするの!? 信じらんない!」

 家に、とまとの怒鳴る声が響く。喧嘩はよくあることだけど、今日はなんだかいつもと様子が違う。
 何事かと部屋に向かうと、そこにはリクの姿もあった。

「もう大っきらい! リクのバカ! 出てってよお!」
「オレっちは、その、ただ」

 意外にも、リクはしおらしい反応を見せていた。いつもだったら、怒るとまとに負けないくらい、言い返しているというのに。
 今日の彼はしどろもどろになりながら「ちがうんだ」とばかり繰り返している。一方、とまとはヒートアップするばかりだ。

「バカバカバカ! じゃぁあたしが出て行けばいいんでしょぉ!?」

 わたしは呆気にとられ、泣きながら出て行くとまととすれ違った。
 何かよくわからないけど、その姿を見てわたしと、今リビングに下りてきたばかりのヴィスは思わず批難的な目でリクを見てしまう。
 とまととリクは確かにしょっちゅう喧嘩をするけれど、最近は落ち着いてきたし、まずとまとを泣かせるなんてことはなかった。こんな大喧嘩、初めてだった。
 リクは心底困り果てた様子だ。

―――何があったの、泣かせるだなんて。
「どうしよう、……あいつ、本気で出て行っちまうかもしれねぇ」
―――どうして?

 リクは話し始めた。
 とまとの部屋に遊びに行ったら、彼女は買い物に出かけていた。そして、机に開いたままの日記を見つけ、つい好奇心で読んでしまったとのこと。

―――いやそれ、全面的にリクが悪いじゃん。
「それはわかってるって! でも、内容がヤバいんだって!」

 そしてリクは日記を出してきた。正直、とまとのプライバシーを侵したくなかったが、あまりにも強く勧めるのでリクが読んだ部分だけ渋々読んだ。

『11月21日 はれとちょっぴりこがらし。

 今日はレベッカ姉さんと一緒に雑誌を読みました。帰りが遅くなってさくらさんに叱られちゃったけど、ヴィスくんが迎えに来てくれたからうれしかったです』

 あぁ、そういうこともあったな、で、何がおかしいんだろう。ただの日記である。
 わたしは次のページを見る。

『パパからお手紙が来なくなってもう一ヶ月。もうあたしのこといらないのかな。
 そうだよね、家出したのはあたしだし、こんな子もういらないよね』

―――……家出!?

 この家の誰もが知らない事実であった。家出?
 確かにお屋敷生まれのお嬢様がこんな小さな村に来るのは不自然だ。それに、彼女が里帰りをしたことは今まで一度もなかった。
 もちろんリクの性格上、なかったふりにして黙ってはいられない。
 つい、「お前はいらない子じゃないから気にするな」と言ってしまった。ここからが大変である。
 さっきの激しい喧嘩はそれが原因だったのだ。
 人の部屋に勝手に入って日記を読んだリクが悪いが、とまとだってこのままじゃ問題だ。
 すぐにでもこの問題について話し合うべきだとわたしは思い、わたしはとまとを追いかけた。
  
 とまとは家の外でぐすぐす泣いていた。

―――大丈夫?
「さくらさん、怒ってますかぁ……?」
―――なんで?
「リクから聞いたでしょ? あたしが、家出してること……」

 わたしはそれを認め、日記を読んでしまったことを謝ってからとまとに尋ねた。

―――あのさ、教えてくれない? なんで、家出したとか……

 とまとは首を横に振った。「きっとさくらさんはわかってくれない」と言った。
 そして、今度は黙って自分の部屋に戻ってしまった。
 ああ、参ったな……わたしは頭を抱えた。わたしって、どうしていつもこういうことに鈍いんだろう。どうして気づかなかったのかな、明るく見えて、とまとだってかなり悩んでたはずなのに……。
 家に戻ると、さっきよりもさらに重い空気に包まれていた。
 とまとは部屋に引きこもったままで、あとの三人は途方に暮れてリビングに座っている。
 家に帰れない? 何故? どうして理由を言えないの? そんな疑問だけが頭をぐるぐる回っていた。
 我慢できなくなったのか、リクが立ち上がる。

「オレっち、ちょっくら行って来るわ」
―――ちょっと、リク!?

 リクはとまとの部屋へと行ってしまった。
 立ち上がるわたしの腕を、ヴィスはつかんだ。

「僕は、リクの行動に任せたいって、思う。なんだかんだで、一番とまとが本音を言えるのはリクだから」
 
 ヴィスは普段あまり話さないけれど、いろんなことをよく見ている子だ。確かに言う通りだと思う。わたしもリクに任せることにした。
 でも、結局心配になったので、とまとの部屋に会話を聞きに行ってしまった。ヴィスも少し迷ったようだけど、やっぱり心配になったみたいでついてきた。