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【どうぶつの森】さくら珈琲

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33.帰り道


 村長さんの身体が心配で、わたしは二、三日村に残ることにした。というのは口実で、本当は整理する時間が欲しいだけだった。いや、それも一番の理由じゃない。この村に残る最も大きな理由は……、みしらぬネコさんに会いたくないことだった。
 彼に伝えなくてはいけないことがあるのに、誤解を解いて、この村の真実を伝えなくちゃいけないのに。
 けれど、わたしの中のある部分は―――何より醜い部分は―――彼がこの村に来て欲しくないと願っていた。彼はすべてを知ったら、サクラさんとの誤解が解けたら、もう二度と、わたしの村に来ることはなくなるだろう。
 それが嫌だった。そうなるくらいならこんな村一つ失ったって、と思う自分が、すごく嫌だった。この村にいる間、ほとんどわたしは自己嫌悪で眠れなかった。
 いつまでもサイハテ村に留まるわけにはいかないことくらいわかっている。大体この村はあらゆる面で不便すぎる。水洗のトイレがないこととシャワーから水しか出ないことが、わたしにはとても辛い。けれど同時に、わたしは今までずっと恵まれてきたのだと気づいた。
 やっと帰ることを決断したとき、村長さんは少し寂しそうだったがやはり快く見送ってくれた。思えば、見ず知らずのわたしに親切に村の事情を話してくれたのも、やっぱりわたしとサクラさんにつながるものを感じたからかもしれない。わたしたちは、そんなに似ているだろうか?
 帰りのタクシーの中、わたしはたくさんのことを考えた。

「……どうだ、サイハテ村は」

 運転手さんはぽつりと聞いた。

―――言ったとおりだった。
「へへ、とんでもねえ年明けになっちまっただな」
―――ほんとにね。
「でもよぉ、さくらちゃん。人生にムダなことなんてなんもねーんだ。みーんな、経験として溜まってくから、安心すっぺ」

 ほんとに、そうだといい。
 わたしの決断が、間違ってなければいい。

「さくらちゃんのことだから、きっとまた誰かのために動いたんだべ?」
―――え?
「へっへっへ、顔にかいてあるだよ。ほんとにやさしーな、さくらちゃん。
 んでぇ、おめぇさんは今何かにすっごい悩んでる。
 でもよぉ、何に悩んでるかはしんねーけど、相手のためになることを考えて動くのが、一番だと思うべや。それって、いつか思わぬ形で返ってきたりもするんだぁ」

 わたしは思わず、バックミラー越しに運転手さんの顔をまじまじと見つめてしまった。

「なんて、良いこと言うなあ、おら」

 と、いつもののんきなカッパに戻っていた。

―――うん、らしくないくらい。

 わたしも、あえて茶化した。