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【どうぶつの森】さくら珈琲

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34.決心


……確かに、彼のためにサイハテ村に行ったんだから、そこで得られた真実をずっと胸の中に秘めておくわけにはいかない。
 伝えなくちゃ、いけないんだ。それが一番、みしらぬネコさんのためになることだ。
 タクシーから降りると荷物を持ったまま、わたしは走り出した。
 なのに、余計な声が頭の中を響き続けた。

(言わなかったら、彼は何も知らないままだ。だから、ずっとそばにいれるのに)

 あまりにも脆い決心で、それはすぐに崩れてしまいそうで。
 
(サクラさんのことを、まだ好きなのかもしれないのに。いや、好きにきまってるでしょう? わたしなんかより、ずっと)

 響く声は、残酷な事実を突きつけてくる。

(言ったら彼は、いなくなるんだよ)

 でも、決めたんだ。言うんだ。言うんだ、言うんだ!

―――みしらぬネコさん!!!
「さくら!?」

「ハトの巣」に入るなり、わたしは叫んだ。ずっと村にいなかったわたしを見て、みしらぬネコさんだけでなく、マスターも驚いて顔を上げた。

「全然見ないから心配した……どこ行ってたんだよ!?」

 ああ、わたしのこと心配してくれてる。少なくとも今はまだ、わたしのことを好きでいてくれてるんだ。
 うまく声が出ない。言わなくちゃ。頭の中の声が邪魔をする。
 すべてを知ったら、みしらぬネコさんはいなくなってしまうかもしれない。
 彼がいなくなったら、きっとわたしは死んでしまう。
 でも、言わないといけない。何故? それが一番、みしらぬネコさんのためになるから。
 じゃあわたしは? 残されたわたしはどうすればいいの?
 たくさんの言葉、思考、もう全部ぐちゃぐちゃになりそうだ。
 早く言わなくちゃ、そう焦るばかりで。
 だからつい、思いついた言葉を、口にした。

―――ノラ。

 自分でも最初、何を言ったかわからなかった。
 ノラ、そう呼ばれた彼の顔がどんどん青ざめていく。

「その名前を、どこで……」
―――……わたし、サイハテ村に行ったんだ。

「なんでそんな勝手なことするんだよ! オレにはもう関係ない!」
―――みしらぬネコさんは、勘違いしてるよ。
「は……!?」

 わたしは息を吸うと、決心が鈍らないうちに、また心の声に邪魔されないうちに、一気にまくしたてた。

―――サクラさんは村を捨てたんじゃない。村を守ろうとしたの。そのために結婚をして、騙されて。
    彼女は嘘なんかついてない。サイハテ村は今、本当に大変で、村長さんは身体を悪くしてて……。
「そ、そんなの、嘘だ」
―――嘘じゃない。この目で見たの。あとは自分で村に行って確かめて。
「なんだよそれ、どうしてそんな勝手なことするんだよ! さくらはオレにいなくなってほしいの!?」
―――違う!! 違うけど……。

 やっぱり、彼を傷つけるだけの真実だったのだろうか。
 でも、それでもわかってほしくて、わたしは必死に続ける。

―――ねぇ、行って。行って故郷を守らなきゃ。
    あの日、みしらぬネコさんは言ったよね。『故郷が残ってるうちなら、それをどんなところでも大事にしてほしい』って。
    だから、行かなきゃ。ねぇ、お願い、みしらぬネコさんの思い出の場所が残っているうちに、行かなくちゃ……。
「なんだよ、それ……」

 いきなり突きつけられた真実に、彼は唇をわななかせたまま絶句した。そして、そのままふらふらと店から出て行ってしまった。
 わたしも力が抜けてしまって、その場に崩れるように座った。
 すると驚いたことに、マスターがカウンターから出てきてくれた。
 目の前にしゃがみこむと、わたしの肩を抱いて、優しい口調でこう言うのだ。こんなことは、初めてだった。

「……よく、頑張りましたね」

 それを聞くと、わたしは声をあげて泣いてしまった。