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玄塊群島連続殺人 黎明編

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平板な闇夜に包まれた草深き山里の内奥へと、路端に宿る灯火が永遠と続いている。その幻想的な光の川は、彼女たちを、仮住まいである民宿へと導いているはずである。敷石を踏み締め、繰り返されるリズム音は、儚い余韻を残して夜の闇に消えていく。
変化に乏しい路傍の不気味な様子は、次第に、美禰子の平衡感覚を乱し始めた。
今、私たちは終わりなき悪夢の中にいる。この永い彷徨の末に、やがて訪れるであろう、微かな諦念を伴った目覚め。
美禰子の芳しくない体調を慮るように、前を歩く少女が時々振り返る。その都度、美禰子は優しく微笑もうとするのだが、そのあまりに微細で急速な表情の変化を、笑顔とは、普通受け取れるものではない。
少女の目がその「笑顔」を映す。
「泣いてるの?」
無垢な瞳から、美禰子は思わず目を逸らす。
この子がそう誤解するのも、無理はない。私は人に笑いかけるのが、苦手だ。泣いたようにひきつっていた顔をしたのだろう。慣れない事はするものではないな。しかし。
誰かと楽しい想いを共有したいと思う時が来るなんて、思わなかった…。

私は、この子と一緒に帰るべき場所がある。
「ちゃんと前を見て。私は大丈夫。まだ歩けるよ。」
そう言って否定しなかった美禰子は、やはり泣いていたのかもしれない。少女が案じたのとは、別の理由で。

これから、彼女は此処で事件を解決する力の一端を担うだろう。しかし、それは事件が起きる前から、完成していた仕組みを忠実に動かすだけの作業に過ぎない。
それでも構わない。それが声無き声を代弁する事になるのなら、私は喜んでその泥を被ろう。
そう思って此島に来た美禰子ではあったが、彼女に会って以降、考えを改め始めていた 。

この子を「利用」すれば、真実の裏に隠された世界の理を、解き明かす事が出来るかもしれない。