儚いもの
「……ウォルター」
『あれ?』と目を合わせて、まさか本当にコイツ今まで俺のこと気が付いてなかったわけじゃねぇよな、とうウォルターは顔を強張らせる。
まさか、そんな。悲しすぎるぞ、オイ。
いや、おそらく、気づいていても気にしてなかったとか。
どちらにせよショックだけど。
でもまあ、それがアンディだ。
「アンディ、こういうの好きなのか?」
先ほどまでの皮肉を消して、純粋な好奇心で尋ねる。
なんだか、意外性があって。アンディがこういうものに興味を持つなんて。
すると、案の定、アンディは正面に向き直ってぽそりと言った。
「別に」
大きな目を据わらせて、ステンドグラスを見上げ、感情を見せず、どうでもよさそうに言う。
「こういうの、あんまり見たことなかったから、ただめずらしくて見てただけ」
ぼそぼそと言って、つまらなさそうにうつむく。
『ありゃ』とウォルターはしまったという顔つきをして、ぽりぽりと頬をかく。
そして、『あー……』とためらいがちに口を開いた。
「……じゃあ、解説とかいる?」
「え」
きょとんとして見られて、ウォルターは気まずげに口ごもり、やがてあきらめて言った。
「いやー……ダリぃけど、どういう場面かとか、説明できなくもないぜ? もし、おまえがキョーミあるんなら、さ」
横目でうかがうと、アンディは無表情で、素っ気なく返した。
「いらない」
それはあっさりとしていて、ウォルターの言いにくそうな様子さえ問いつめるものではなくて……なんだかウォルターは助かったような気持ちになった。
楽になった。
「ま、そうだよな」
先ほどよりいくぶん力の抜けた感じで、気楽にステンドグラスを見上げて、眺める。
ちらと横に視線をやれば、アンディが隣で同じようにステンドグラスを見上げていて。
ウォルターの脳裏に、幼いころの自分と、それより小さな少女の姿がよみがえった。