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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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ゼロスの看病も虚しく、哀れな人間の少女は、日に日に病態は悪化していった。もう、ほとんど食事もとれなくなり、その症状により、ベッドの上の住人となってしまった。
ゼロスは何度も何度も少女のベッドの横に立っては、「そろそろ契約を受け入れてくれませんか?」と、ささやいた。
しかし、意思の強い少女はどんな状態になっても首を立てには振らなかった刻一刻と死神が少女に愛を迫っていた。
少女は、夜な夜なベッドの下の得体の知れない気配に恐れ、涙を流していた。
時々、その恐怖に耐えかね、自分へ「お願いだから殺してほしい。」と懇願する少女に、青年のない心が疼きそうになった。息も苦しく、むせ返るようだ。
そんなある日、ゼロスが何か食べられそうなものをと思って、フルーツを持って少女の部屋を訪室したときだった。
二回りも小さくなった少女は血を枕の上に大量に吐き、床の上にうずくまっていた。
水をグラスに汲みに行こうとしたのだろうか。きっと、息も絶え絶えになりながら。
「リナさん!」ゼロスは少女に駆け寄った。
「ゼロス・・・」
「大丈夫ですか!?」青年は少女を抱き上げて、その青白い顔にぞっとした。
「ゼロス・・・あたし、もうだめみたい。」少女は震える手をその青年の端正な顔に置いた。魔族の青年はその手を握った。

「どうしてあなたは苦しみから逃れようとしないんだ!人間なんてすぐに死んでいくつまらない存在になぜしがみついているんです!?僕にはあなたがわからない。
 限りある生に神は本当に無情だ!!」

そう、青年は叫んでいた。その声を聞き、少女は涙を流した。
「あんたは地上の美しさをしらないのね。優しい魔族さん。」
その紫の相貌は揺れていた。姉ちゃんがせっかくお膳立てしてくれたことも無駄になってしまったけど・・・ねえ、ゼロス。お願い。ガウリイに伝えて。ありがとう。元気で生きてね。って・・・」
そして、闇の青年の胸で少女はゆっくりと目を閉じた。
「リナさん・・・。僕にはできませんよ!あなたの死を受け入れるなんて!!」青年は少女の首元に顔を寄せ、唇を強く噛んだ。
「神があなたを見放そうとも、僕はあなたを死なせはしない!!」
青年は決意し顔を上げた。
口元ですばやく印を結ぶと、瞬時に丸く輝く幾何学模様の光が出現した。
その光は少女を包み込んでいた。
目を閉じていた少女はその光に苦しみ、目を見開いた。
そして、闇の青年の腕の中で苦しみもがいた。
青年は強く少女の体をきつく抱きしめた。
少しの間、耐えてくださいと耳元で告げ。
やがて、少女の乾燥しきった髪はゆっくりと艶やかな髪へと変わり、
その塁痩が目立っていた体はふっくらとした少女の体つきへと戻っていった。
頬には朱が差し、唇は妖しい色香が漂うほどに、ふっくらとした赤みを帯びていった。長い睫毛は伏せられ、劇的な体の変化に疲れたのであろう、少女は静かな寝息をたたえ始めた。青年は、それを確認すると、ゆっくりとベッドの上に少女を降ろし、シーツを掛けた。
背後に気配がして振り返ると、そこにはカールした金髪を持つ妖艶な美女が腕組みをして立っていた。
「お前が、スフィードナイトの契約を果たしたな。」
「はい・・・獣王様。」
「よい。お前が果たすのも、私が果たすのも同じことであろう。」
妖艶な美女は魔族へと変貌を遂げた少女の顔を満足げな顔で見下ろしていた。
「それにしても、この娘は美しいな。」
美女は青年の肩を軽く叩き、にやりと笑った。
「この乙女の唇が欲しいか?」
「もう、お前の物だ。なぜなら、魔族にされたものは、その魔族の言いつけを守らなければならない。お前もそうだからわかるだろう?」
そして、女性は青年の顔を覗き込んだ。
「魔族の花嫁にでもするか?お前のお気に入りなのだろう?」
その問いかけに、青年は静かに押し黙っていた。

『自由な少女はこの僕に永遠と呼べる間、捕まってしまった。』