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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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エピローグ


高い山には湿気った空気がぶつかると雲が湧く。それはさながら山の神がパイプをふかしているようだと人々はささやいた。
しかし、今日はめずらしく雲ひとつない夜だった。
少女は月を背に、その山の岩に座って遠くを見つめていた。風に煽られ、その長い髪はさらさらと流れた。
「リナさん・・・」
そこに、闇をまとった青年が現れた。少女はその姿に振り返る。
「ゼロス。」
青年はゆっくり近づき、右手を少女に差し出した。その手には白い小さな花があった。
少女はそれを受け取り、小さな花の匂いをかいだ。
「迎えにきたの?」
「ええ。」
少女はその手を取って立ち上がり、くすりと笑った。
「ガウリイさんは亡くなったんですね。」
しばらく少女は黙っていた。
そして、「ええ。ガウリイは天に召されたわ。」と言った。

「わかってるわ。ゼロス。私はあんたと同じ宿命を背負っているのよ。あんたと同じ存在。」
「その宿命とはこの世界が滅びるとき、
 まさに、母の身胸へと還るのを見守ること。」青年は、厳かに少女に伝えた。少女は、その答えにしっかりと頷く。
「それが魔族ね。」
それはさながら誓いの言葉。
そして、少女は月を仰いだ。
「ゼロス。ただね、あたしはその宿命を持ちながら、輪廻転生するガウリイの魂を探し続ける属性を持っただけの話よ。」
そして、少女は闇を纏った青年を抱きつくと、背伸びをして、その唇に一度だけキスを落とした。
青年は少し驚いたが、そのキスに応じ、少女を抱きしめ返そうとした。
そのとき、少女はするりとその腕から抜けて、
3歩後ろへと下がった。

そして、彼を見据えた。
ありがとう。この永遠の時間とあなたからの自由ををくれて。と、つぶやいた。

「また、会いましょう。
 永遠の時を共に生きる私の花婿さん。」

そして、一瞬の内に少女の体は闇へと消えてしまった。後に残ったのは、少女の優しげな香りだけ。
青年は自分の唇を指で押さえ、小さく笑った。
「いつ結婚できるんでしょうね?」
くっくっく。と、笑って、おかしくなった。
「リナさん。僕とあなたは、肉親や兄妹と違わない存在。あなたの心は痛いほどによくわかる。遠く離れていても、この胸に自然と流れ込んでくるんですよ。」そして、目を細め、錫杖を静かに地面に突いた。
「そして、僕はあなたを求め続ける属性を持ったということですね。」


それが≪契約の代償≫だということを理解できた。


冷たい風が優しく彼の頬を撫でた。

***

お疲れ様です〜!ワルス虎です。ありがとうございます!≪契約の代償≫をお読みくださって!楽しんでいただけたでしょうか?
ちょっとこの小説の前半はぐだぐだな感じでしたが、(しかも書きかけでけっこう放置していた。汗)でも、ここまで読んでくださって感謝感激です!!

今回のテーマは、もうほとんどタイトルにも書いてありましたが、≪契約の代償≫でした。
何が本当の代償なのだろうかということを考えて書きました。ちょっとセンチメンタルな話でしたね。ハッピーエンドだかそうでないのか、ちょっと判断しがたい。でも、みんなそれぞれの思いがあって、動いた結果。こういう風になってしまった。と、思っています。
もちろん。この話はゼロリナをベースに描いているわけなんですが。
ゼロスはガウリイとリナの関係を認めた上でのアプローチでしたね。
実は彼は散々な人になってしまいました。リナには振られちゃうし、とんだ災難ですが。彼は、彼女の命を助けたのにね〜。
一応この話の選択肢で、リナはゼロスの配下になったわけですからゼロスの命令をきかなければだめなんだけど、それをあえてしていないというところに、ゼロスの優しさや愛があるような気がします。
個人的には私は姉なので、自分がどうなっても妹を助けたい!というルナの愛する心のほうが、真実なのですが・・・(笑
それでは、またの作品でお会いしましょう〜!