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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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第2章 めぐりあい輪廻


聖王国セイルーンのアメリア女王は、その生涯を国を夫とし、独身を貫き通した聖なる女王として敏腕を発揮し、後世に讃えられていた。
そんな国と結婚した女王には一人だけ王子がいた。
その王子は、母の青い瞳を受け継いだが、髪の色はやや灰色がかった色をしていたと、城の肖像画には描かれていた。
アメリア女王の妊娠が発覚した際、相手の人物は誰であるかと国中で論争が起きたが、女王は王子の父親を告げることを頑なに拒み、その身が死に至るまで告白することはなかったという。
女王は人に聞かれるときには、『わたくしは神の子を身篭ったのです。』と、言い張ったという。
そのため、アメリア女王の血族に連なるものは、神の血を受け継いでいることが公式になった。
かくして、アメリア女王の王子の出生の秘密は、この聖王国セイルーンの謎となり、伝説になった。
その王子の出生が問題とはなったが、母親譲りの優しさと慈愛の心をもった王だった。
さらに、精霊魔法も自由に使いこなし、王は人々に愛された。
そして、その素晴らしい才能で人々を導き、ますます国は栄えたという。
本当に先代の王が神の血を引いているかは定かではなかったが、王の傍らには神の使いがいたという。
そして、代々素晴らしい国王や女王に恵まれ、この国は繁栄を極めた。
そんな輝かしいまでの栄光を讃えられた家族。
アメリア女王が没してから、500年の月日が流れ、19代目の国王が君臨している時代だった。アメリア女王は伝説の人となり、天使の羽を背おった彼女の銅像が静かにセイルーンの白と金の王宮を見守っていた。
次の王位継承者は、その国の唯一の宝である二十歳を目前とした王子だった。
その王子は国民や周囲の人々から国王になるのを期待されていた。
彼は精霊魔法を歴代の王の誰よりも自由にこなしていた。さらに、彼の容姿はアメリア女王の子供の容姿にとても似ていると言われ、有能であった先代の王の再来だと囁かれた。
名前をゼルガディスといった。
彼は襟元で跳ね上がった癖のある灰色の美しい髪をしており、アイスブルーの冷たい瞳を持っている容姿端麗な青年だった。
その美しい青年に国中の誰もが、恋仲になることを望んでいたが、当の本人はそんな欲望で満ちた思いで自分に群がる女たちに興味を示すことはできなかった。
彼の取り巻きの女たちは、自分のことを考えない。自分の容姿端麗な顔ばかり気にしている女や、王妃になり、派手な生活を送りたいと思っているだけの女は、いつも自分のご機嫌をとりたがることを知っていから。
ゼルがディスは派手に化粧をし、美しい衣装で飾り立てたむせ返るような臭いのする女性よりも気になる存在があった。
その人物とは、この大きなセイルーン宮殿の敷地内の高い塔に住まう住人だった。
その白い不思議な塔は王や王妃、または最長老神官やごく限られている神官しか立ち入ってはいけない場所とされていた。
しかし、いくら国や神官たちがその人物を隠しても、セイルーン王宮に長らく住む者であれば必ず、一度はその住人を見かけたことがある。

その住人とは。

それは遠目からでもわかる美しく長い亜麻色の髪を持つ、白いドレスを着た少女だった。
立ち入ってはいけない塔であっても、その少女は年に数回くらい庭の池のほとりに座って足を組みぼんやりしている姿を見かけた。
少女の顔は我を忘れるぐらいに美しく、少女らしいしなやかな身体を持ち、その唇はふっくらとし薔薇色に染まっていた。
その少女はゼルガディスが物心ついたときから、その姿を変えることはなかった。
彼の周りは強欲な女性ばかりだったので、その少女から姿を変えない神聖なまでの彼女を特別に見ていた。

「あの子は、きっと、俺がじいさんになっても、あのままの姿に違いない。」

きっかけはなんだったのか?
ある時、例によって庭の池のほとりを大きな石の上で座ってぼんやりしている少女を見つけた。
ゼルガディスは、その姿がいやに儚げで、悲しく、そのまま硬直したように目が離せなくなっていた。
青年に見られていることに気が付いた少女は水面に、落としていた視線をこちらに向ける。
ふと視線が絡み合うと、少女はにこりと微笑み、すぐに景色へと溶けて行ってしまった。
青年はしばらく心臓の高鳴りを抑えられなくなり、そこに佇んだ。
「・・・ッ。」

そしてその後、少女がこの国の一角にある塔で、特別に扱われていることがわかった。彼女は人間の姿をしているが、人間ではないことにも。

それからゼルガディスは城中歩くときに、彼のアイスブルーの瞳は、不思議な少女を探していた。
どこか、胸の中で、少女を知るのは己を知ることにつながるような気がしてならなかった。
未だにあの不思議な少女に囚われている。
しかし、ゼルガディスは決して、自分の思いを口にすることはなかった。
それは、父王や祖父に言われた戒め。
『いいかい?ゼルガディス。よく聞いておいで。
 このセイルーン宮殿の一角にある塔に住む、白い少女をお前も何度か見かけたことがあるだろう?
 あのお方がどんなに素敵であっても恋はしちゃいけないんだよ。』
『あのきれいなお姉ちゃんに?どういうことなのお父さん?』
『あの方はね、もう、500年も昔から、この聖王国セイルーンを魔族より守ってくださっているお方なんだ。この国の守り神様なんだよ。』
『でも、これとそれをどういうつながりがあるの?』
『あのお方は齢をとることがない方だ。お前も大人になったらわかるさ。それに、お前は王にもなるから、いずれあのお方と話す機会があろう。それまでは、あの方の幸せのために祈ってあげなさい。』
『ふ〜ん。』

ゼルガディスは、その時に子供で、父王が何をいっているのか理解できなかった。とにかく、少女がこの聖王国セイルーンの特別な存在であることだけはわかった。
大人になった今は、父王が話していた理由がわかった気がした。
あの少女は齢を取ることがない、悠久を生きる者。
自分たちとは違う存在なのだ。

そこにこそ不幸があるのだと。

彼女は寂しい人なのだ。と。
きっと父王もそのまた先代の王たちも皆、あの不思議な少女に恋をしてきたのだろう。
(血は争えないな。)少し、笑って、ゼルガディスはそう思った。
しかし、少女の姿をした神は誰よりも自由だった。
時に、しばしば姿を消しては数日〜数週間帰ってこなくなるときがあるようで、そのときは、父王や神官たちがざわつき、災厄が訪れるかもしれないと囁いているのをゼルガディスは耳にしたことがあった。
確かに、少女が姿を消すと、聖王国の周辺の地区で低級な魔族が暴れているといった事件が起きていた。
あの少女が500年もの間、歴代の王たちを導いてきたのだ。
ゼルガディスもまた、例外ではなく彼女に導かれるであろう、他の興味は持てなかったが、彼はそれを望んだ。

そのときこそ、昔から恋焦がれていたことが夢が叶うであろうと。