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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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ばたばたばた・・・
騒がしい足音が、彼の私室へと近づいてきてた。
これは侍女の足音ではないな。と心の中で思った。
その足音の主は、遠慮なく彼の扉を開けた。
「ゼルガディス王子!ゼルガディス王子!朝ですよ!」女の子の声は寝ている彼に遠慮なく降ってきた。
これではゆっくりしたくともゆっくりできるわけがない。
騒がしいなと心の中で悪態をつきつつ、朝はまるっきり低血圧のゼルガディスは、しぶしぶベッドからその身を起こした。
「ゼルガディス王子!今日は待ちにまった剣闘士との戦いですよ!
 さあ、早く起きて、準備しましょう!みなさんがお待ちですよ!」
両手にこぶしを握って、両目を輝かせている。
元気いっぱいの少女だ。
この少女は名前をアメリアといった。
齢は14歳。
まだまだ女性と呼べるには早いこの娘は、ゼルガディスの少し遠い親戚だった。
何代か前のセイルーンの王女がセイルーンの有名な商家に嫁いだ先の子孫だ。
セイルーン王家はこの商家と政治的、金銭的な意味でも密なつながりがあった。
親戚関係であるのだから、それも自然なことかもしれないが。
そんなアメリアは城ではちょっとした有名人だ。
なぜなら、アメリアは成長するにつれ、宮殿の前に佇んでいるアメリア女王に似てきているから。
でも、それも当然といえば当然だ。
アメリアも血族に連なるものなのだから。
ゼルガディスはそんなアメリアを見て小さく笑った。
さらに、その商家の大切なお嬢さんだ。
セイルーンの役職の高官たちもこの元気すぎる娘を無下にはできないだろう。
なんせ、セイルーン国の大きなパトロンだ。
しかし、あまりに元気がよすぎるため、あきれ果てたアメリアの両親がゼルガディスの父に頭を下げて、このセイルーン王宮で行儀見習いを学ばせることとなった。
そういうわけで、セイルーン王家の神殿にて巫女見習いをやっている。
子供のころからここで成長したようなものなので、彼女はこのセイルーン王宮では顔パスだ。
昔っからアメリアは彼女の父の仕事のため、よく王宮にやってきていた。
5歳離れているが、まるで兄弟姉妹のように仲良く遊んだ心許せる唯一の存在だった。
ゼルガディスの子供の頃は乳母の乳兄弟とアメリアでよく王宮で遊んだものだった。
アメリアは本当にどんくさい少女で、よく失敗ばかりしていたずらした際も捕まるのは彼女だけだった。
(よく、お兄様、お兄様。と懐かれていたっけ。)ゼルガディスは心の中で、昔のアメリアを思い出し、小さく笑った。
「わかった。用意するよ。
 お前が来たら、うるさくって眠れないからな〜。」
「あ〜!なんです!人を悪者扱いして。
 でも、あたしが起こしに来なかったら、寝坊して遅刻して、王様に起こられちゃうのは、ゼルガディス王子なんですからね!」
いつものアメリアのふてくされたような顔。でも、最近少し壁があることに、気が付いていて、ゼルガディスは目を細めた。
いつの頃だっただろうか?
アメリアはゼルガディスのことを「お兄様」とは呼ばなくなっていた。
こんなに、何気なく会話できる妹のような存在であるのに、「王子」と呼ばれると、否が応でも、この少女との隔たりができたような気がして彼は嫌った。
しかし、これも子供から少女、女性へと成長する過程で、どうしょうもないのかもしれないと思った。
「ああ、わかった。わかった。
 ありがとう、アメリア。」ゼルガディスはアメリアにひらひらと手を振った。
それを確認するとアメリアは、にっこりと満面の笑みになり、
「じゃあ、私、闘技場で待ってますね!」そう言って元気すぎるアメリアは、そのままマントを翻して走り去ってしまった。
ゼルガディスはアメリアが走り去ったのを確認してから、ベッドから這い出てきた。

テーブルの上に置いてあるグラスに入ってある水をぐいっと、いっきに飲んでため息をつく。
今の姿をアメリアに見られたら、「あーーため息をつくと幸せが逃げていってしまいますよ!」などとおせっかいなことを言われかれないと思い、くすくすと笑った。
彼は本当は闘技場で戦うなんて、気が進まない。
ゼルガディスはあまり目立ちたいほうではないのだ。
他人に自分の力を誇示するなんて好きじゃない。
できれば、ひっそりと過ごしていたい。
でも、セイルーン王子として、また次期国王としての自分の立場がそれを許さない。
もちろん、戦いにわざと負ける気というものは、さらさら持ってはいないが・・・
また、闘技場で勝てば、また女たちが騒ぐに決まっている。煩わしい限りだ。
これを考えるとゼルガディスは苦渋の顔になった。
それよりも国の書庫に篭り、魔道書を読み漁っていたほうがよっぽどいい。

しかし、それとはまた違う気持ちもあった。
この試合は神に捧げた神前試合だった。
ということは、あの塔の少女に捧げられたものではないのかという思いもあり、もしかすると、あの少女が自分のことを見てくれているかもしれないという期待感を同時に持っていた。
淡い心を胸に、ゼルガディスは部屋を後にすることにした。