契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉
その瞬間、闘技場の中のすべての観客は息を飲んだ。
金属同士が激しくぶつかった高い音が響き渡り、いかにも強者(つわもの)であろう大男はその場に激しく尻餅をついた。
宙に舞い上がった剣は風を切りながら弧を描き出し、その大男の開いた足の間に勢いよく突き刺さった。
「ひぃぃぃぃーーーー!!」
股間の間の自分の剣に驚き、大男は情けない声を上げた。
ゼルガディスは男の顔に剣を向けると、大男は「参りました!王子!!」と言い、彼は自分の剣を空高く掲げ、勝利を宣言した。
その剣の先は太陽によって光沢が光った。
静まりかえった闘技場から一転。
そこは歓喜の声に満ち溢れていた。
わーわー!!
ゼルガディス王子が勝ったぞーー!!
おめでとうございます!!!
闘技場に集まるたくさんのセイルーンの民衆。
皆、次期国王になる人物がどんな人物か知りたく、この闘技場に集まっていた。
次期国王になる人物に国の未来を期待して。
でも、ゼルガディスは期待を裏切る男ではなかった。
秀でた剣術。
並外れた精霊魔法を操り、この神前試合において、次々に強敵を倒していった。
戦い方もスマートだった。
この勝利の王子を見て、この闘技場にいる誰もが次なる繁栄を予感したのだった。
それに合間ってか、歓声の声は一際だ。
しかし、一方で黄色い歓声も聞こえる。普段よりも多く、闘技場に集まっている民衆は、男性より女性のほうが多く見えるのは気のせい?
いや、気のせいではなかった。
端正な顔立ちで有名なゼルガディス王子の戦う姿を一目見ようと、国中の女性ファンが集まっているのは間違いなかった。
王子には熱狂的なファンが多いのだ。
美男子であり、また王子様という肩書きが夢を誘いと、まだ結婚していないという期待感が彼女たちのハートをくすぐった。
さらに、この神前試合の勝者はゼルガディス本人だったのだから、もうその歓声の声は一際だ!世の男性たちは独り占めしてしまうこのゼルガディス王子を妬むくらいに。
きゃあああーーーーー!
ゼルガディス様ーーーー!!
王子ーーーーー!!
こっち向いてーーーー!!
ゼルガディスが勝利したからよかったものの、もし、負けようものなら、それはそれで、このファンたちは黙っていなさそうだ。
きっと、この黄色い声は対戦相手に向かって罵詈雑言を向けるに違いなかった。
ゼルガディスが勝利したことに、喜んだのは何もゼルガディスの女性ファンだけではない。
次期国王の強いイメージを国民に印象できることができて、現セイルーン国王や側近たちも満足していた。
それだけではない、神前試合の空席の神の台座の片隅で、見習い巫女のアメリアも胸で祈るように手を組んで顔を上気させていた。
今この勝利宣言の場で、ゼルガディスに向かって駆けて行き、彼に今すぐにでも抱きつき飛び上がりたかったが。
でも、彼女の立場はそっと見守ることしかできなかった。
きっと、今ゼルガディスの名前を読んだところで、この歓声にかき消されてしまうに違いなかったから・・・。
どんなに、昔から兄妹のような関係で仲良くしていたって、アメリアにとって彼はどんどん遠くなってしまうように感じた。
だんだん大人になるにつれてのこの距離感。
自分はまだ子供で。彼はもう大人の男性。
その気持ちはそっと自分の胸にしまって置くべきなのはわかっている。
アメリアは自分の胸にある感動とこの国民の歓喜の渦により胸がいっぱいになり、目頭が熱くなった。
作品名:契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉 作家名:ワルス虎