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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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あの塔の不思議な少女の空を飛ぶ速さは尋常の人間の魔力ではなかった。
少女は大空を滑るようになめらかに飛んだ。
ゼルガディスは人間の及ぶ力ではないことを理解した。
彼は必死になって少女の後を追った。
当第一の魔法の使い手といわれているゼルガディスの魔力を持ってしても、少女の早さにはついていくのはやっとだった。
その飛び方はあの神の眷属のゴールドドラゴンとも全く異なるものだと理解できた。
少女の飛び方には重力というものや風の抵抗といったものを感じさせなかったのだ。
父王から昨日話してもらった、伝説のような少女の話によると少女の魔力は黄金色とのことだったが、今の少女からその黄金色の魔力というものは感じ取ることはできなかった。きっと、少女は本気というものは出していない。少女はまるで遊んでいるかのようだ。
少女はセイルーンシティからそれほど遠くない太陽が昇る方向の町へ飛んだ。
そして、その町の周りをゆっくりと旋回すると、町外れの森の中へと吸い込まれるように降りていった。
ゼルガディスはその様子を確認し、直接少女が降りていった先ではなく、手前の森の入り口へと降り立った。
いくらセイルーンシティよりそう遠く離れていない場所だといっても、あの不思議な少女を見失うまいと全力で魔法力を使い追いかけてきたのだ。彼の息はもう上がっていた。
「はぁはぁ!もしこれ以上遠くにこられていたら、絶対にあの少女を見失っているところだった!」

ゼルガディスは上がる息を整え、胸に手を当てた。そして、森の入り口を見た。
木の立て看板が立っている。
どうやらこの道の先は隣町へと続いているようだ。
しかし、あたりに人気がないところを見ると、この道は不便なのか?もしくは、裏道なのか?と彼は考えながら、森の入り口を後にした。
そこは広葉樹がどこまでも茂っているセイルーン郊外の森でよく見かける風景。しかし、道は砂利できちんと整備されており、小道にそってきれいな小川がさらさらと流れていた。
奥へと進んでいくと、その広葉樹の葉の間から木漏れ日が漏れ、ところどころ木がないところが広場のようになり、色とりどりの花が咲き乱れていた。
この道の進む方向は、不思議な少女が降りたった方向と間違っていなかった。
(いつも、ときどき塔を不在にする少女・・・一体こんなところに何の用が・・・?)
ゼルガディスは森の奥に進むにつれ、隠された少女の秘密を暴きにかかっているかのような錯覚に陥り、胸が早鐘を打っていった。
ふと、遠くを見ると、先に白い木造の家が建っていた。
(あそこに??)
早く少女の秘密を知りたい焦る気持ちを抑えつつ、ゼルガディスはゆっくりとその小さな家へと向かって歩いていった。
その白い小さな家の大きな窓をそっと覗いても誰もいなかった。
誰もいなかったことを安心してか、彼は(一国の王子が何をこそこそとやっているんだ。)と、少し恥じ、ため息をつく。
そして、その裏手のほうに目をやると、そこは広葉樹は途切れ中規模の畑が広がっていた。
ゼルガディスはおもむろに、植えられた背の高い花壇まで寄っていくと、女性の笑合う声が聞こえてきた。
彼は一気に緊張した。
何も悪いことなんてしてはいなかったが、自分の身を白い家の壁に隠した。
そして、こっそりと声のするほうの様子を伺った。
畑の先のほうには外用の鉄製の白いペンキで塗られたテーブルが置かれてあって、そこには長い金髪の美女とあの少女が仲よさそうに並んで座っていた。
金髪の美女が焼いたのだろう。ケーキやクッキー。それに畑で採れた野菜やフルーツが置いてある。
それられに手を伸ばしながら、手に紅茶のカップを持ち口に運びながら、二人は見つめ合い、くすくすと笑い合っている。
女性特有のコロコロとした笑い声。彼はその笑い声を聞いて、顔まで真っ赤になった。
今までは、城の中では見かけてもすぐに、その姿を消してしまうあの少女。
あまりに不思議な存在のため恋焦がれずにはいれない少女が、今まさに手に届きそうな範囲にいる。
でも、ゼルガディスはしばらく少女たちをじっと食い入るように見つめた。
女の子のお茶会?
でも、それとは違う眼差しを感じる。
絡み合う二人の視線。
あの不思議な少女は金髪の美女を目の前にして、信頼しきった眼差しで彼女を見、まるで好きな男性に見られているかのようにはにかんだ笑顔を美女に向けている。
金髪の美女もそれに答えるように、優しく、語り掛ける。
あの不思議な少女は城では見たことがないほどに生き生きとしていた。
ゼルガディスは知らず知らずに、唇を噛んでいた。