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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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見ず知らずの女性の家の中に、まさか入ることになるとは思っていなかったため、ゼルガディスは金髪の美女の誘いに一瞬と惑った。
しかし、その優しげな手招きに、彼は素直に彼女の誘いを受けた。

ゼルガディスが住んでいる豪奢な作りの王宮とは全く違った質素な作りの白い扉を開け、彼はおそらく一人暮らしであろう金髪の美女の家の中へ足を入れた。
(一人暮らしの女性の家に男が入るなど紳士のすることじゃないか。)と、一瞬思った。
が、神前試合の祝杯を放棄してまで追いかけてきた少女の秘密を知ることができるという思いが心の中で止められない感情としてゼルガディスを支配していた。

その木で出来た白い家の中は、まるで外とは違った印象を受けて、彼は周りを思わず見渡した。
外に広がる色とりどりの美しい庭や畑とは違い、妙にこの部屋はこざっぱりとしている。
女性らしい飾りつけなど一切なく、生きるために必要な家具などが必要最低限揃えられている。
その家具も飾りっけなど一つもないのだ。
ゼルガディスは無機質な印象を受けた。
窓の外を見ると、もう、すっかり日も暮れていて、ところどころに置いてあるキャンドルの炎がこの薄暗い部屋を照らし出していた。

小さなテーブルに腰掛けるように促され、ゼルガディスはその椅子に座った。
この部屋に自分の居場所がないような気持ちになり、両手を膝において、台所へと出かけていった金髪の美女を待った。

しばらくして台所からは蒸気の立つ音が聞こえてきた。

静かに銀のプレートの上にティーセットを乗せた金髪の美女が現れた。
テーブルの上に丁寧に置くと、白いティーソーサーをゼルガディスの前にコトリと置き、カップの中かにほのかにうす紅色のローズティを注いだ。
その中に先ほど摘んだ薔薇の花びらが2枚ほど浮かべられ、甘酸っぱい香りが彼の鼻をくすぐった。
目の前の美女は自分も椅子に腰掛けると、自分の分もローズティーを注いだ。
彼女は終わるとちらりとゼルガディスを見て、
「どうぞ、お飲みくださいませ。」彼に促した。
「ああ。」
勧められるがまま、彼はローズティーを口にした。

「あの娘の名はリナというのか?」

彼は、少し黙っていたが、金髪の美女を見て、ずっと自分が知らなかったことを口にした。
金髪の美女はその質問にクスリと小さく笑い、
「ええ。そうですわ。
 あの方はリナという名前ですわ。
 正確にはリナ=インバースという苗字もお持ちです。」
まるで、尊敬する人物のように丁寧に答えた。
「そうか・・・。」
ゼルガディスは今ここにきて、やっとあの不思議な少女の名前を知った。
城の誰もが彼女について教えてくれなかった。
「王子様は、まるでリナのことは全く知らないみたいですね?」
不思議そうに彼女はつぶやいた。
その言葉に、彼は反応し、
「いや!そんなことはない!知っている!知っているんだ。ずっと、昔からあの少女のことは知っている!
 しかし、そうだな・・・あんたに、そう指摘されれば、俺は全く彼女のことを知らないのかもしれない。」
金髪の美女に指摘されたことに、ずっと彼女に思いを募らせてきたゼルガディスは少々むっとしたが、しかし、彼女が言うことのほうが正しいと思った。
昔から知っているとはいえ、あの少女のプライベートなことなど一切知りもしない。
目の前の金髪の美女に寄せるあの少女の信頼の眼差しが自分にあるわけはない。
そう、思って、彼は目を伏せた。
その様子を見ていた金髪の美女は楽しそうに、笑った。
「うふふ。王子様。わたくしは『あんた』ではございませんわ。
 名前はガブリエルと申します。
 天使の名前でしょう?リナがわたくしにつけてくだすったんです。」
「ガブリエル・・・。」
「ええ。これからはガブリエルとお呼びください。
 わたくしにも名前があるのですわ。」
そして、その真っ赤な口紅がよく似合う唇に片手を当て、コロコロとした涼やかな声で品よく笑った。
ゼルガディスは金髪の美女の妖艶な美しさに、気恥ずかしくなり、少しだけ頬を赤らめた。
「では、わたくしの質問です。
 王子様はリナとはどういうお知り合いなのでしょう?
 こういったことはレディーファーストではないほうがいいと思うのです。」
美女は笑顔でゼルガディスを見据え、頷いた。
その頷きに促されるように、彼は話し始めた。

「あの娘との関係は、俺自身に物心がついたときからの関係のような気がする・・・
 セイルーン王国を継ぐものにとって、不可欠な存在・・・。」

いったい何年前からあの不思議な少女がセイルーン王宮に住むようになったかは定かではないが、彼女はそのセイルーン王国のほとんど者者が立ち入ってはいけない塔に住んでいるということ。
ごく少数の者にしか彼女との接触は禁じられていること。
もちろん、その存在や意味などはほとんどの者に伏せられていること。
それが、王子であるゼルガディスであってもその規律は変わらないこと。
でも、年に何回かはあの少女が塔の前や王宮の庭で佇んでいることがあること。
そして、あの少女は時々、姿を消してしまうこと。
その際に、必ず、亜魔族の不穏な動きがあること。

そして、最後に、
「俺の知りうる限りでは、あの娘は俺の小さいころからあの少女の姿を変えていない。
 つまり、あの娘は永遠に少女の姿であり続けるのだ。」
即ち、少女はセイルーン王国の神であると。

ひとしきり話し終えたゼルガディスが顔を上げるるとそこには、静かにゼルガディスの話を聞いていた金髪の美女は別段驚いた様子もなく、穏やかな表情があった。