契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉
ゼルガディスが顔を上げると、妖艶な容貌を持つ金髪の女性はなんとも不思議に穏やかな表情をたたえていた。
彼が話した内容は、実に不思議な内容であったのにも関わらず。
その表情を見て、ゼルガディスはやはりと確信した。
ガブリエルもあの不思議な少女の奇跡を知っているのだ。
もしかすると、自分よりも深く。
「ガブリエル、俺の知っていることはこれだけなんだ。
教えてくれ。
あの少女のことを。」
ゼルガディスの真剣な眼差しに、ガブリエルは静かに彼を見た。
その二つの空の色の双眸はゼルガディスを映し出していた。
しばらく黙っていたガブリエルは穏やかに口を開いた。
「王子様は、リナのことがお好きなのですね。」
その眼差しに、彼は一瞬不意を突かれ、顔を赤らめた。
「俺は!」
「しぃー!」
小さなテーブルの反対側から、彼女の白くしなやかな手が伸びてきて、ゼルガディスの口元を軽く覆った。
そして、美しい笑顔で彼を見ていた。
「何もおっしゃらないで。」
一瞬のことだった。
彼はそのひんやりとした柔らかな手の感触を唇に感じ、心臓が高鳴った。
「あなた様の気持ち、わたくし十分に理解できますわ。
ですから、わたくしからリナのことを知りたかったのですね?
お城からリナの後を秘密で追いかけてくるまでに。」
しかし、ゼルガディスは次に彼女の顔を見ると、美女の青い瞳からは深い思いを感じた。
その思いは、何なのか今の彼には理解できなかった。
「リナは見るものすべての者に特別な思いを与えて行き、その心を奪う。
わたくしにとっても例外ではありませんわ。
リナはわたくしにとって最も大切な存在なのです。
わたくしの天使。」
そして、金髪の美女は自分の胸の前で手を組み合わせた。
作品名:契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉 作家名:ワルス虎