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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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バタン!立て付けの悪い扉を閉めるときちんと閉まらず、その扉はキーキー鳴って、仕方がなく彼の妻が扉を閉め行った。
金髪の美女の義父はそのまま、自分の家の今にあるテーブルにのいすに座ると頭をもたげた。
その背中は丸く、彼の足はストレスで小刻みに揺れていた。
そんな様子を見て、彼の妻は不安げに見た。
先ほど暖炉の火で暖めたお湯があったので、カップにお湯を張り、落ち込んでいそうな夫の前に置いた。
男はそのカップと妻の顔を交互に見て・・・そして、隣の部屋の隅のほうで縮こまっている金髪の少女を見た。
そして、そのカップの中の湯を飲み干すと、カップをダン!と音を立てて置いた。
その高い音に、妻は顔をしかめた。
「あんた・・・お金は村長さんところから借りることはできたんだろうね?」
言われるとわかっていた。
その質問。
男は、少しの間黙っていた。
そんな様子に、妻は痺れを切らした。
「どうだったんだい?」
妻に詰め寄られ、重たい口を男性は開いた。
「・・・お前のところは借りすぎだ。と、言われたよ。」
「どういうことだい!?」
「今は、どこの家でも一緒なのだそうだ。
 村長さんは俺にこう言った。
 明日を生きることに一生懸命だ。
 申し訳ないが、ワシらでさえも今冬乗り越えられるかどうか必死なのだ。
 お前の性格はわかっているが・・・悪いな・・・。と。」
男性はそう言って、「村長さんにはろくに取り合えってもらえなかったんだ。」と、付け加えた。
その言葉が返ってくるとはある程度は予想していたことだったが、妻の顔は一瞬の内に絶望と疲れを合わせた顔になっていた。
「そんな!
 こんなに寒いのに、まだまだ冬は長いのよ!
 薪だって、もう底を尽きそうなのよ!」
「明日みんなで拾いに行けばいい・・・。」
妻はその場に立ち尽くしていた。
その声を聞いたのだろう、男の子が一人隣の部屋から自分の指をくわえながらゆっくり歩いてきて、母の足へ抱きついた。
「お母さん・・・おなかすいた。」
その言葉に、ぐっとこらえていた妻の双眸が揺れ始め、
彼女はしゃがみこみ、子供の顔を抱きしめ撫ぜながら嗚咽の篭った大量の涙を流し始めた。
「う・・・っ・・・・ううっ・・・」
そんな様子に男の子は戸惑い、「お母さん泣かないで!」そう言って母を抱きしめた。
男の子体は見るも無残に塁相が顕著に目立っていた。
その痩せた手で母の涙で塗れた頬を撫ぜた。
母はその手を優しくとって、何かを決心したような顔つきになった。
「見てよ!あんた!この子の手を!
 こんなに痩せてしまって・・・!!」
その手を夫の前にまざまざと見せつけた。
「あんたの子よ!この痩せこけた姿があんたの子の姿なのよ!!
 これがあたしたちの現実よ!!」
「・・・」
「もう、この家には子供たちに満足に食べさせてあげる食事だってない。
 ここ毎日毎日、あの石の様にかちかちになってしまったパンを塩のスープの中に入れて柔らかくなるまでふやかして食べさせて。
 子供たちだって、こんなに痩せてしまって!
 ・・・あたしたちでさえも生きていくのに必死なのに、それに加えてあの疫病神・・・あんな子がうちにいるから、さらに食い扶持が増えるのよ!!」
その女性の悲痛な泣き声に反応し、部屋の隅の方で縮こまっていた金髪の少女ガブルエルは毛布をそっと脱いで立ち上がり、震えながらこちらのほうを見た。
「あんた、知ってるの?
 もう、このご近所さんのお宅にもほとんど食料なんてないんだよ。」
そして、義母は我が子強く抱きしめながら、ガブリエルを見た。
「あんな子どこかに行っちまったほうがいいに決まっている!
 奴隷商人に売られちまえばいいのさ!」
「お前・・・!なんてことを!!」
先ほどの男とのやり取りを思い出し、男性はカッとなった。
そう言って、義父は立ち上がり妻の頬をぴしゃりと叩いた。
その叩かれた部分を押さえながら、義母は涙を流し、ガブリエルを睨みつけていた。
父親が母親をぶったことに、びっくりした子供は泣き始める。
父親はそのまま席に着き、どんっとテーブルを叩いた。
「なんてことを言うんだ・・・!まだあの子は12歳だぞ!!それに俺の兄の忘れ形見だ!」
「そんなこと、今のあたしたちには関係ないわ!
 奴隷商人に売られても、売られた先がここではなければ、ここよりも悪いことになるはずがないわ!!」
ひどい恨みの念を義母の目から感じ、ガブルエルは動けなくなっていた。
そっと、自分の手を胸に当てた。
胸が締め付けられるほど痛んだから。
血は繋がっていなくても、自分のことを育ててくれた両親が、自分のために争いを起こすことは好きではなかったから。
義母は昔から冷たかったけれど、それは貧しさ故だと幼いながらも心の中で理解していた。
そして、こんな冷たい家族でもガブリエルは家族の幸せを愛している。
兄弟たちだって。
(家族の幸せのために、わたしがいなくなればいいの?)
「あんたなんか!あんたなんか厄介者よ!!」
何度も何度もそう叫ばれる義母に、ガブリエルは恐れた。
(自分さえいなければ、小さい弟たちにもっと暖かいスープを食べさせてあげることができるのに。)
自分自身の存在を否定し、今この場で消え去りたかった。
「あんたなんか、どこへなりとも消えておしまい!!!」
自然と少女は耳を自分の手で覆っていた。
涙が溢れ出てきた。
耳を塞いでも、義母の耳を劈く(つんざく)ような声は少女の心の中まで聞こえてきたのだった。

気がついたときには私は、義母の言葉に恐怖し、家を飛び出していた。
義父の自分を静止する叫び声と義母と言い争う声が少し聞こえたが気にならなかった。
どちらの方向に走ったか覚えていない。
夕暮れの雪が舞う道をひたすら走った。
そして、道の真ん中で、誰かにぶつかり、その人に両手首を握られたのだった。
顔を上げると、そこにはしたり顔の大きな男性がいた。
「おっと!お嬢ちゃん。
 前を向いて走らないと危ないぜ。
 でないと、こんな危ないおじさんにぶつかっちまう。くくっ。
 飛んで火にいる夏の虫とは・・・ガブリエル、お前のことをいうのだろうな。
 俺には幸運がついている。」
そう、言い終わると、男は無精ひげが生えている乾燥した唇を舌なめずりをした。