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契約の代償〈第二章めぐりあい輪廻 P31ガブリエル回想UP〉

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少女はほとほと困り果てていた。事の発端は自分がいけなかったのだと、少女は後悔した。この晩秋にぜひともゼフィーリアに帰りたかった。
少女はゼフィーリアの葡萄畑に思いを馳せた。
昔にお母さんが夜になると作ってくれて飲んだ、ほどよい甘みがあるホットワイン。それにつけて食べるバターたっぷりのシンプルガレット。緑色の葡萄や紫の葡萄を余すことなく焼いたパイ生地の上に乗せ、ナパージュでキラキラコーティングしてある伝統菓子のなんともいえない食感!

あの味をもう一度!

な〜んて、強欲に思ったのがいけなかったんじゃ。
ふるふると少女は頭を振った。
誓ってそれだけの理由じゃないと。それだけの理由で、あの怖い姉のいる場所へ足を伸ばそうなどと。姉は絶対に何事も起こるはずもないことは十分に承知している。
本当は少女は、家を何年も出ていたものだから、両親のことが気がかりだったのだ。
それと、長旅で少女も少し疲れているなと感じていた。少し両親の元で休憩もしたい。
そんな理由だった。
それで少女は、金髪の青年ガウリイを伴ってゼフィーリアに帰ってきたのだった。
少女は、もしかしてまだ実家に帰るのは早かったかな?と思う反面。その両親にも、怖い姉にも、遠からず近からず、この青年を紹介することになるんだからと思ったからだ。
少女はだんだんとゼフィーリアが近づいてくるにつれ、街道沿いに葡萄畑が見え始めた頃から胸がざわついた。想像してたことが、間近に迫ってくると、人間というものはいても立ってもいられなくなるのかもしれない。

両親はなんて顔をするだろうか?金髪の青年を伴った娘を。

(ああ。少しだけ肌寒い。
 この澄んだ秋の空気。)
少女にとって、どれをとっても懐かしく、少女のひとつひとつの細胞はこの土地から作られたことは間違いないと確信した。
しかし、その懐かしい気持ちは実家に着いてすぐに吹き飛んだ。
少女はなかなか心構えができなかったので、誰にも気づかれないように、こっそり家の玄関を開けた。
その様子をガウリイはあきれた顔で見ていたが。
ギィギィーと、扉を開けた先は、
「リナ。」
少女を早々に待ち受けていたのは、あの姉の満面の笑顔の涼やかな声だった。
その姿に少女は思わずのけ反った。
「げ!!」
「ちょっとリナ、何その態度は?
 何年ぶりかに帰って来たと思ったら、私の顔を見るなり”ゲ!!”はないでしょう?」
「ひい〜〜〜!
 ご・・・ごめんなさい!姉ちゃん!!
 だだだ・・・だって、どうして!姉ちゃんはあたしが今帰ってくるのを知ってたの!?
 この時間は姉ちゃんはいつもウエイトレスのアルバイトで忙しいじゃない!?
 日曜でもないのに!」少女はパニックになっていた。
そんな様子に少女の姉は満面の笑みだ。
(こ・・・この笑顔知ってる!!!)少女は身の危険も感じていた。
幼い頃から、姉と共に過ごしてきて培った第五感が少女に警鐘を鳴らしているのを全身で感じたからだ。
「あら?どうしたの?リナ。
 顔はこちらに向いているのに、あなたの体はドアのほうに向いているなんて、変ね〜。」くすくすと笑って。
少女の姉は、いつもの調子でゆっくりとしゃべった。
「え?」少女はとっさに自分の体を見た。
「あなたって、本当に器用な子ね〜。」少女の姉は面白そうに見た。
(あたしのことわかっているくせに〜〜〜〜〜ぃぃぃ)
「あ、あは・・・あはははは。」もう、乾いた笑しかでない。
まるで蛇ににらまれたカエルのように、少女の体は硬直して動けなくなってしまった。ただ、ひたすらへらへらして笑っていることしができない自分は一体・・・と、少女は思った。
「リナ、それにしてもよく帰って来てくれたわ。そちら、あなたの彼氏さんね。ようこそ。そして、お帰りなさい。」
少女の姉は少女を抱きしめた。そして、引きつる少女の頬に軽くキスを2回すると、少女の両肩を持ち、そして、少し厳しい顔つきになると、
「リナ、帰って来て、早々。一息つく暇すらあげない、私を許してね。」と言い、軽くため息をついた。
「私、あなたに頼みたいことがあるのよ。もちろん頼まれてくれるわよね。」
その瞳に、有無を言わせない力があるのを知って、少女の背中には冷たいものが流れた。
「これなんだけど・・・」
少女の姉は飾り棚の上に置いてあった小包を手に取り、少女の目の前へと差し出した。それは几帳面の彼女の性格を反映してか、綺麗な模様のある包装で梱包したあった。
それはそれは大切そうに渡そうとしている姉の姿に、この小包が間違いなく恐ろしいものが入っているにちがいないと少女は確信し、ごくりとつばを飲んで、両手を出した。

こんなものあたしに渡そうとするなんて・・・
ああ・・・なんて優しいお姉さま・・・

少女は、己の行く末に不安を感じた瞬間だった。