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Love of eternity

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5.

「……何も聞かないで差し上げましょう。目覚めたら、これと、これを飲ましてあげてください。―――しっかりしなさい!そんなへこたれた顔をしてないで、いつもの馬鹿ッ面で……」
「誰が馬鹿ッ面だ!」
 勢いよく、差し出された薬瓶を奪い取るとギンと睨みつける。
「そうそう。それでこそ貴方らしい。犬は犬なりにきゃんきゃん吠えているほうがいいのです」
 にっこりと邪としかいいようのない微笑を浮かべるムウに吼える。
「誰が犬だ!」
「ああ、失礼。猫でしたっけ?何となく犬っぽい気がしていたものですから」
「―――表に出るか?」
「では、本物の薬はこのまま私が持ち帰るとしますか。そっちは致死量の毒物なんですけどね」
 さらりとアイオリアの邪眼をかわし、フフフと薄く笑うムウは懐からもう一つ薬瓶を取り出した。思わず手に持った薬瓶とムウの手の中にある薬瓶を見比べるアイオリアを見て、ムウは愉快そうに声を上げて笑った。
「あはは。嘘ですよ。冗談に決まってるじゃないですか。私がそんなことするわけないでしょう? 」
 いや、すると思うぞ……おまえなら。
 喉元まで出かけた言葉を無理やり飲み込んだためにアイオリアは後味悪そうに眉を顰める。
「それと。アイオリア、そっちの薬は熱が出るだろうから必ず飲ませて。解熱作用と鎮痛作用がありますから。ところで……あなた、一体なんて顔してるんです?」
 眉を顰め、言いたいことを堪えているアイオリアを見て、再び笑いのツボに嵌ったのか、いつまでも顔を隠して笑い続けるムウ。
 いい加減腹が立って、殴ってやろうかと思ったアイオリアははっとしたように立ち尽くした。
 ムウの頬に光る筋が煌めいたのが見て取れたのだ。
「―――本当に…こんな…馬鹿げたことに……あなたが傍にいながら。どうして彼までも、こんな目に会わなくちゃいけないのです……」
「ムウ……」
 ずきりと痛む心。すでにひび割れていた心に大きな亀裂が走るのを感じる。
「もう、たくさんだ。悲しい思いをするのは。―――帰ります……これはある程度シャカの身体が回復したときに飲ませてください。見た目以上に……彼の傷は深いのだということをお忘れなく」
 もう一つの小さな薬瓶を人差し指と親指ではさみ、アイオリアの掌にぽとりと落とした。
「これは?」
 その小さな薬瓶には毒々しい紫色の液体が満たされていた。
「―――厭な事は忘れたほうがいい。ああ、でも、私のように―――憎しみを糧にするという手もありますね…飲む、飲まないは彼に決めさせるといいでしょう。ただし、飲ませるのは半量だけです。それ以上服してしまうと、古い記憶にまで影響を与えてしまう恐れがありますから」
「古い記憶?」
「ええ。楽しかった思い出、大切な想い……失くしたくはないでしょう?」
 ふっと悲しく笑ったムウにアイオリアが頷くと、今度こそムウはジャミールへと戻っていった。


作品名:Love of eternity 作家名:千珠