Love of eternity
4.
―――そんな……。
―――なんということを!?
―――あまりに過酷すぎるっ!
怒りが全身に満ちていく。
怒りの余りに身が引き裂かれそうになる。
いや、いっそ引き裂かれ血を流せばどれだけこの心は楽になるだろうか。
「―――離せっ!私に触れるなっっ!離せぇぇっ!」
肌に触れられたことで恐慌状態に陥ったシャカの鋭利な小宇宙がアイオリアの皮膚を抉る。
「ああっ!―――やめろっ!やめろぉ……アイオリアに近づくな……っ……あいつには何もするなっ!」
身を捩り、髪を振り乱して狂ったように抵抗するシャカの力は凄まじかった。
「シャカっ、シャカっ!しっかりしろ!俺はここにいる。大丈夫だから、俺は大丈夫だからっ!」
狂い、叫びを上げるシャカの細い身体を抱きしめる。
「あ……あ…ああああーーーっっ!!」
絞り出すような悲鳴に近い叫び声。こんなシャカを見る日がくるなどとは思いもしなかった。
―――確かにあの子は強いところもあるが、弱い部分だってあるんだ。
―――そんなとき、おまえが助けてやれよ?いいな?
兄の言葉がアイオリアの胸を黄金の矢となって射抜く。その胸からは目に見えぬ血が流れ出た。
「ごめん…ごめんな……おまえを…守ってやれなくて……ごめん……ごめ…っ…!!」
震えるおまえを抱き締めることしかできない。叫ぶ声を聴くことしかできない。
『――――君が送るどんなサインも、最後の最後まで受け止めよう。だから、アイオリア……君は忘れないで欲しい。いつでも、どこでも、決して一人ではないということを』
『―――強くあれ、アイオリア。誰もおまえを傷つけることができぬほどに』
そうやって励まし支えてくれたのに。
おまえがどんな想いで俺を見守ってくれていたのか。
空を見上げて、真直ぐに進むことを教えてくれたおまえを俺は守れなかった。涙が溢れ、頬を伝う。
泣くことさえもできぬほど、傷ついたおまえを強く抱きしめ、おまえのかわりに泣くことしかできないなんて。
―――悲し……すぎる。
「ああ…アイオリアを……どうか……奪わないで」
か細い声で訴えながら、力なく崩れ落ちていくシャカの細い身体はよりいっそう儚かった。
その身体をアイオリアは悲しみの嵐が吹き荒ぶ心のまま、壊れそうなほどに抱きしめた。
作品名:Love of eternity 作家名:千珠