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Love of eternity

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3.

 シャカは答えようとはせず、顔をただ俯かせ、無言でアイオリアを拒絶しているようにカミュには見えた。
 アイオリアは諦めたように一度深い溜息をついた。くるりとアイオリアは顔をこちらに向けると「先に戻っているから」と告げ、ポンと軽く肩に手を置いたのち、ひとり先に聖域への帰途についた。
 その後ろ姿からはシャカと解り合えなかったことをアイオリアが落胆しているようにも見えた。シャカを責めながら、どこかでアイオリアはシャカに理解して欲しかったのではないだろうか、同じ側に立って欲しいと望んでいたように感じずにはいられなかった。
「私たちも戻ろう、シャカ……」
 顔を俯かせたままのシャカに声をかけたが、聞こえなかったのか返事がなかった。もう一度声をかけながら、シャカの肩に伸ばしかけた手は結果、途方に暮れることになった。
 顔にかかる髪の隙間から僅かに覗いた唇は血の気を失くし、硬く食いしばったまま小刻みに震えていた。
「……愚かなものだ」
「シャカ?」
「奪われるものが聖衣だけならば、関ったりなど……しなかった…ただひとつの大切なものを守るために私は……けれども、そのためにした私の行為によって結果的にアイオリアの心を殺していた……か」
 震えを伴いながら吐き出された言葉に対して、返す言葉が見つからなかった。その頬に光る涙など流れてはいない。けれども白く蒼褪めた頬に流れ落ちたようなそんな気がした。
 シャカの辛辣な忠告も、鋼の心のように勅命に徹する姿勢も、心底アイオリアのことを想ってのことだったのだとしたら?
 あくまでも想像の域ではあったが、もしもそうならば…皮肉にもアイオリアの言葉はシャカにどれだけ致命的な打撃を与えたことだろうと思った。
「シャカ、おまえ……」
 そっとシャカの肩に手を置く。小さな震えが指先から伝わってくる。それはシャカの心さえも伝えてきたような錯覚を覚えて、思わずそのまま身体を抱き締めた。
 どうしてやることもできない。
「カミュ、私を哀れむな。血を流す心など……私にはないのだから」
 吹き荒ぶ風にも決して荒れることのない水面のように静けさを装う声音だった。必死でもがき苦しんでいながらも、それを表には決して現そうとはしなかったシャカ。
 そんな彼に対して同情することは侮辱にも値すること。それでも、ただひとつだけ、そんなシャカにしてあげたいことがあった。
「わかった…私にはこれくらいしかしてやれなくて……すまない」
 静かの水面のような白いシャカの頬を指で辿る。
 枯れた涙のかわりに輝石に輝く雪の結晶がその頬に浮かび上がり、するりと滑り落ちていった。




Fin.

作品名:Love of eternity 作家名:千珠