Love of eternity
Still Waters -Rondo-
1.
もしかしたら、解り合えるのではないかと期待していた。あいつなら、きっと俺のことを解ってくれるような気がした。
ただ遠くから俺の行動を見張るだけの、まったく手を貸すこともない冷たい眼差しを向ける連中と、どれだけ俺が傷つこうが一向に意に介すことのない彼らとは違ったから。俺の傍らに立ち、共に戦ってくれたあいつだったから…。
でもきっと解り合う事など、できはしないのだろうという思いもあった。無慈悲なまでに勅命に徹するシャカの姿勢に対して反感を抱いていたから。
顔色ひとつ変えることなく、人の命を奪う姿をまざまざと見せ付けられるのはある種の拷問ともいえ、揺ぎ無いシャカの姿勢は心底からの恐怖さえ覚えるほどだった。人の残酷さ、冷酷さを目の当たりにした気がした。
どうして、なんの迷いもなくその力を揮うことができるのか……。強さだけではない『何か』にシャカは雁字搦めにされているような気さえした。
鬼気迫る『何か』。
まるで強迫観念に囚われているかのようなシャカ。
なぜ、そうまでして人の命を奪わなければならないのか、俺にはわからなかった。
その一方で、壮絶なまでに美しさを放つその姿に瞳を奪われることがあった。
圧倒的な力と技は充分に魅力的であり、そして、その力を余す事無く存分に揮うシャカに嫉妬するのだ。ただ己が善とする正義感、倫理に囚われているだけの俺とは違い、それすらも超越してしまったようなシャカに。
そして、そんなシャカの手にかかることができた者にさえ、嫉妬の念を抱くほどに。
そんな俺はいつか狂ってしまうような気がした。
俺の信念をいとも簡単にシャカは覆してしまいそうな、シャカという存在が俺の正義になってしまうような、そんな危惧を憶えた。
だから、解り合えないほうがよかったのだ。これでよかったのだ。
なのに、何故?心が痛くて堪らない。
……ちりちりと胸の奥が痛い。灼けた砂のように、干乾び割れた地のように心の奥底が悲鳴を上げている。
苦しくて、苦しくて堪らなくなる。俺の中にある何かが悲痛な声をあげ、叫んでいる。
正体の掴めない影が日の光に照らされたいと、干乾びた大地が慈雨を希う叫びから俺はただ耳を塞ぐことしかできなかった。
作品名:Love of eternity 作家名:千珠