Love of eternity
Love of eternity
1.
じりじりと焦げるような痛みというべきか、ちくちくと刺すような痛みというべきか。
眠れない夜をまた過ごすのだろうか―――。
盛大な溜息がまた一つ闇に溶け込んでいく。ごろりと横に身体を向け、左腕を枕にしてもう一度眠りに落ちようと目を瞑る。
すると、また脳裏に浮かび上がってくる一人の残像……。
ざわざわと胸の奥から不可思議な思いが湧いて出る。
チッと舌打ちすると、結局眠ることを諦め、のっそりと起き上がったアイオリアはシャツを着ると外に出た。
天を仰げばいつもは青白く輝く月も今日は出ていない。そのかわり天に敷き詰められた星たちが小さく煌めいていた。
重い足取りのまま訓練場へと向かう途中で、今はなるべくなら顔を会わしたくないと思っていた人物とばったり鉢合わせてしまった。
それでも、相手に悟られないよういつもの調子で声をかけた。
「どうした。こんな夜更けに出歩いて。珍しいな」
「そっちこそ、こんな時間に散歩とは。いつもならとっくに寝ちまってる時間だろ?」
なんとなく歯切れの悪いと思うのはアイオリアの邪推かもしれないが、魔鈴に何かあったのかと考えを巡らす。
「どうした?」
「いや。別に……どっか行くんだろ?じゃあね、おやすみ」
アイオリアの視線をどこか避けるようにして、通り過ぎようとした魔鈴から、ふわりと漂ってきた憶えのある香りにアイオリアは眉を顰めた。
「……アイツのところに行っていたのか?」
一瞬立ち止まった魔鈴は、少し顔を向けるとまた前を向き直り、何も答えず立ち去ろうとした。
「おい、魔鈴……アイツはやめとけ」
今度こそ立ち止まり、ゆっくりと振り返った魔鈴は静かに答えた。
「……それはどういう意味だい?」
「つまり……あの男はおまえには相応しくないと思う」
「ふ〜ん。どういう男なら相応しいと思うんだい?あんたは」
ゆっくりとアイオリアのもとに戻ってきた魔鈴はアイオリアを下から覗くように見上げた。どこか、挑戦的な態度をとる魔鈴。
―――気を悪くさせたのだろうか。
アイオリアは余計なことに口を出すべきではなかったのかもしれないと今更思いながらも続けた。
「おまえにはそうだな……陰日向なくおまえの支えとなってくれる男がいいと思う。おまえは人に頼られることがあっても、決して人に頼ることをしない女だ。静かに見守り、何も言わなくても、そっと手を差し伸べることのできるそんな男がいいだろう」
まるで父親が娘の恋人を品定めするかのような口ぶりに魔鈴はいつしか声を上げて笑った。
作品名:Love of eternity 作家名:千珠