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Love of eternity

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3.

 魔鈴から教わった場所にそっと気配を殺して忍び込む。
 大理石の柱に身を潜めながら、灯りが燈る舞台のような場所に目を向けた。祭事の宮に務める美しい女官たちが大勢集まっていた。
 こんな夜更けに何をしているのだろうか。そんな疑問を抱きながら、じっと様子を伺っていると、厳粛な音楽が静かに流れ出した。紡がれる調べに乗って、静かに滑り出すように前に一人歩み出る。
 絢絹を重ね合わせながらも、ほっそりとした体躯が灯りに浮かび上がる。その身体を彩る見事な細工を施された銀細工や宝玉。しかし、何を持しても圧巻なのはそれらの宝玉に負けぬ輝きを放つ、黄金の絹糸のごとく舞う、艶やかな髪。
 全てが幻想世界のような錯覚に囚われた。
 奏でられる音の響きに合わせて、女官たちが次々と一人の舞い手に倣うように舞い踊る。
 その中心にいる舞い手の無駄の無い、しなやかな動きの美しさに魅入った。
「……見事なものだな。」
ぎょっと背後を振り返ると人の悪い笑みを浮かべたアルデバランが立っていた。
「久しぶりだな。アイオリア」
「ああ。驚かすなよ……」
 柱には隠れきれない巨体を揺らしながら、アルデバランが小さく笑った。
「おまえが聖域に来ているなんて珍しいな」
 視線は煌びやかな踊りの繰り広げられる舞台へと釘付けたままアイオリアが問うと、柱に凭れたアルデバランは声を潜めながら答えた。
「まぁな。教皇の生誕祭に顔を出さないわけにはいかないだろう。おまえも行くんだろ?」
「俺は……不参加だ。というより呼ばれてもいないんでな。それで、あの女官たちが舞の練習をしているのか。なるほど」
 毎年、教皇宮で華やかな祭り事が行われているとは聞き及んでいたが、一度も参加することがなかったアイオリアはどのようなことが行われているのかは知らなかった。別段不満に思うことはなかったが、遠目でもわかる素晴らしい舞を、もう少し近くで観賞することができればよいのに、と少し残念に思った。
「今年は舞い手の指導がシャカだからな。女官たちも相当な覚悟と気合でもって臨んでいるらしい」
「え?」
「ほら、あの中心にいるのがシャカだ。おまえ、気付かなかったのか?」
「てっきりーーー女官の一人だとばかり思っていた」
「はははは。そんなことをシャカが知ったら、おまえ殺されるぞ」
「……かもな。黙ってろよ」

『そこの二人、隠れてないで出てきたまえ』

 キンと鈴鳴る声が直接脳裏に語りかけてきた。
「……見つかったか。どうするアイオリア」
 肩を竦めながらも、どこか嬉しそうな表情のアルデバランに呆れながら、アイオリアは答える。
「どうするって……うわっ!」
 躊躇する間もなく、シャカの力によって舞台へと移動させられた二人に敬意をもって膝を折り、頭を垂れる女官たち。気恥ずかしさに居た堪れない気持ちになりながら、アイオリアは立ち尽くした。
「暇なのだろう。手伝いたまえ」
 そういってぽんと投げ出された装飾した剣を受け取り、アルデバランとアイオリアは互いに顔を見合わせた。
「剣舞ぐらいできるであろう。彼女たちに見せてやれ」
パンっとシャカが高らかに手を叩くと、テンポの速い音楽が紡ぎだされた。
「久しぶりの手合わせといくか」
「仕方ない。ああ」
すいと互いに剣を構え、互いに奏でられる調べに合わせて緩やかな曲線を描きながら剣戟を重ねる。
その横でシャカは講釈を垂れていた。
「……アテナは武器を使うことを良しとしない女神だが、敵もそうとは限らない。剣、槍…さまざまな武器をもって戦いに臨んでくる。それらに打ち勝つためには我々もその特性を知らねばならない。そういったことから、剣舞も学ぶ。おまえたちも自らの身を守る上で体得しておくとよいだろう」
 しばらく二人の動きを観察したのち、パンっと小気味よい音をシャカが鳴らすと、音が止んだ。
 かちりと剣先を下に向けた二人はふうと一息つくと、シャカを見た。
「もう、いいのか?」
 アルデバランが尋ねるとシャカはこくりと頷き、下がるようにとクイと顎をしゃくる。
 そして、今度はシャカ自らがアイオリアの前に歩み出た。
「さて、もしも剣で挑まれ、素手で応戦しなければならない場合、どのように打ち負かせばよいのか。小宇宙を使うことのできぬおまえたちに、方法を見せてやろう。かかってくるがいい、アイオリア」
「―――怪我をしても、知らんぞ」
「誰に言っている?」
 ふっと笑みを浮かべるシャカに向かって、すっと剣を翳すと、舞うように躍りかかった。紙一重で切っ先を交わしながらもシャカは優雅な舞を披露しながら、反撃する。
 アイオリアもまたシャカの攻撃を交わしながら、その動きを止めるべく真剣に立ち向かった。そのうち周囲の歓声も届かぬくらいにシャカの動きに集中していた。

作品名:Love of eternity 作家名:千珠