Love of eternity
6.
「ーーーつっ…どこだ……ここは?」
鈍い身体の痛みに顔を顰めながら、周囲を見回す。洞窟のようなそこは湿った空気が周囲に満ちていた。
「おい、シャカ……いるんだろ?」
小さな隙間から毀れる頼りない光はそれでも暗闇の中に人の姿を映し出した。その肩を揺すると、その影はアイオリアの胸に崩れ落ちてきた。
「どうし…….っ!?」
受け止めたアイオリアはシャカの背中にぬるりと生暖かい感触を掌に感じた。アイオリアの鼓動が瞬間的に速まっていった。
そっと掌を翳すと、薄明かりの中で黒く汚れた掌に瞳を見開く。
「あ…そんな……シャカ!しっかりしろっ!」
ぐらぐらと心許無く揺れるシャカの細い体から、ようやく声が上がった。
「―――揺らすな。痛むであろうが」
「す…すまない。大丈夫か?」
ほっと息をついたアイオリアは、今度は静かにシャカを自分の胸に背凭れかけさせた。
「おまえが……無茶なことをしたおかげで生じた風が皮膚を少し深く抉っただけだ」
「―――どこだ?」
「手で押さえている場所だ」
左の脇腹を押さえているシャカの手の上にアイオリアも手を重ねた。
「あまり得意ではないが……少しは足しにはなるだろう」
ぽうと温かな光が掌に灯る。シャカは何も言わずただ黙ってその小宇宙を受け止めていた。
「不思議だな……以前にもこういうことをしたような気がする」
「―――気のせいだろう。きっと」
とくん、とくんと静かなシャカの鼓動がアイオリアに伝わる。心地よいリズムを感じながら、アイオリアは瞳を閉じた。
知っている……このリズムを。
俺を優しく抱きしめてくれた。
強くて温かな小宇宙。
あれはーーーあれは。
「駄目だ、アイオリア……」
シャカの声が小さく震える。
「―――あのリズム……あれは……あの小宇宙は…おまえ?」
身を捩り逃れようとするシャカを逃すまいと抱きしめる。震えるシャカを包み込むように。
「ずっと……一人で…おまえは…痛みに耐えたのか……?辛かっただろうに。苦しかっただろうに……俺の手を汚すまいと…だから……おまえは…ずっと、ずっと俺を見守ってくれていたんだなーーー」
魔鈴の言葉を、そして自分の言った言葉を思い出す。
そうだな、魔鈴。
おまえの言うとおりだ。
おまえには悪いが、こいつをおまえにはやれない。
「なぜ…君は……思い出したのかね……」
「言っただろう?心の底から、魂の果てるまでおまえを愛そう、と。少々時間がかかったが、おまえの技を破ったんだ。褒めてくれ」
「馬鹿……者…が……」
すっと顔を上げたシャカにアイオリアは微笑むと、ゆっくりと唇を重ね合わせた。
それはほんの少し、涙の味のする口づけで。きっと、自分は二度と忘れたりしないだろうとアイオリアは思った。
Fin.
作品名:Love of eternity 作家名:千珠