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Love of eternity

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木漏れ日と影と


1.

 春の香りを運ぶ風が柔らかに聖域を吹き抜けていく。久しぶりに訪れた聖域は表面上は安定した教皇の小宇宙によって守られ、穏やかに見える。
 遠く闘技場から洩れ聞こえてくる喚声。何も代わり映えのない風景。ただ、黄金聖闘士たちだけが、取り残されてしまったような気がした。
 バラバラになった仲間たちの心。
 もう、きっと一つに結束することはないのかもしれない。
 己自身も過去の思い出には封印したのだから。
 サワとそよぐ風に金の髪を泳がせながら、眼下に広がる聖域をそっと青い瞳で見つめた。



「―――誰かと思えば。シャカではないか。相変わらず細っこいな?背はまた伸びたようだが」
 人懐こい笑みを浮かべて近づいてくる巨体にほんの少しシャカは首を縦に頷いた。
「どうやら君だけが此処にいるようだな」
「ああ、アイオリアやミロはあまり宮にいないな。せっかく獅子宮へ戻されたというのにアイオリアはもっぱら闘技場、ミロはいつもの如く、宮仕えよりも女のとこに入り浸っているようだ。羨ましい限りだな」
「何故かね?」
 じっと閉じた瞳で見上げるシャカに、え?とアルデバラン戸惑いの表情を浮かべる。
「何故って……まぁ、アイオリアは別として、つまり下世話な話だが彼女がいるミロが羨ましいとちょっと思ったからなのだが」
 改めて問われると照れるではないかと、顔を赤くしながらアルデバランはガハハと笑って誤魔化した。
「つまり、君にはそういった女性がいないということなのか」
 うぐっとアルデバランは馬鹿笑いを収め、今度は渋い顔になる。
「―――おまえは相変わらずキツイことをさらりと言うてくれるな」
 肩をガックリと落としたアルデバランに思いもかけない言葉が降ってきた。
「いや……正直、君のような人格者ならばてっきりそういった者がいると思ったから。フム。意外だ」
 心底意外そうに言うシャカにどう反応すべきかアルデバランは困惑したが、シャカが教皇に挨拶をしてからまた後で話そう、とその場を一旦切り上げたために秘かにほっと胸を撫で下ろしながら、きっとシャカの来訪を誰よりも心待ちにしているであろう友人に、伝えるべくアルデバランは闘技場へと向かった。


作品名:Love of eternity 作家名:千珠