Love of eternity
3.
「―――シャカ!シャカ!!」
「アイオリア?なぜこんなところまで……」
慌てたように階段を駆け上がってくるアイオリアの姿を認めてシャカは驚いたように足を止めた。
「…お…この馬鹿が!」
酷く怒って、突っかかってくるアイオリアにムッとしたようにシャカはつんと横を向くと、スタスタと階段を下りていく。
「おい、ちょっと待てって!」
「いきなり人を馬鹿呼ばわりする男なぞと口を聞きたくはないのだが。その手を離したまえ」
「何だ、その口の聞き方は!こっちは心配で心配で、わざわざ走って駆けつけたんだぞ」
「おまえに心配されるようなほど弱くはない」
グイと腕を引き離してさっさと歩き出したシャカにチっと舌打ちし、ガシガシと頭を掻いてアイオリアは叫んだ。
「このわからず屋め!」
アイオリアはそのまま勢いよくシャカに飛びついた。
「何を……!?」
「うるさいっ!」
ぎゅうっと背後から力強く抱きしめられて、シャカは困惑の表情を浮かべる。そして、肌を通して色んなアイオリアの気持ちが直接伝わってきたために、更に戸惑いを感じながらも、ほんの少し笑みを浮かべた。
「大丈夫だ。アイオリア、本当に」
「嘘だ。おまえは悲しんでいる……何があった?」
小さく首を横に振るシャカをくるりと向かせ、じっと見つめるが、きゅっと口を固く結び、口を割りそうもないと踏んだアイオリアは、もう一度正面からシャカを抱きしめた。
「……おまえは相変わらず、いつも汗くさいな」
「いつも汗臭くて、悪かったな…アルデバランの知らせを受けて闘技場から飛んできたからな。前もって連絡くらいくれ」
「―――止められると思ったから」
「当たり前だろう!?何のためにおまえを此処から遠ざけたと思ってるんだ」
「―――わかっている」
「いいや。わかってない。俺がどれだけ辛抱しているかなんて、おまえはわかってない!」
なお一層、腕の力を強めてぎゅうぎゅう抱きしめるアイオリアをシャカは呆れたように、そして少し嬉しそうにその大きな背中に手を回す。
「わかっている……アイオリア。私も同じだから」
「―――本当か?」
「ああ」
シャカの顔をマジマジと見つめるとほんの少し鼻の下を伸ばし、目尻を下げたアイオリアの鼻をシャカはクイと摘み上げる。
「イテテ!」
「いい加減離れたまえ」
しぶしぶアイオリアはシャカの身体から離れて並んで階段を下りていく。
「今日はここに留まるのか?」
「私は早く帰ったほうがいいのであろう?」
シャカが意地悪く答えると、わかりやすいぐらいにテンションを下げたアイオリアにシャカは声を上げて笑った。
「わ……笑うな!」
そのままふわりと羽が生えたように、階段を駆け下りていくシャカをアイオリアが追いかける。
ちらりとシャカは教皇宮に顔を向け、一瞬笑みを消す。シャカはほんの少し憂いを浮かべたが、追いついたアイオリアに穏やかな笑みを浮かべると、共に並んで処女宮へと向かった。
Fin.
作品名:Love of eternity 作家名:千珠