現実と欲望と天国の間
森の中を少年の手に引かれながら、奥へ奥へと進んでいくと古い小屋が現れた。
「ここだよ。」
「この小屋が・・・」
「この世界の管理人が住むところさ。
さあ、静かに歩いて行って、
真実を見たほうがいい。」
少女は少年に促されると、恐る恐る扉の入り口へと近づいて行った。
その扉は無用心に開いたままだった。
中は薄暗かった。
少女は扉からそこを覗き込んだ。
そこにはいつも少女を見守ってくれている青年が静かに椅子に腰掛けていた。
青年は目を閉じているようだった。
次の瞬間少女の世界は一変した。
あまりの光に、一瞬少女は目を開けて入られなかった。
「一体なんのつもりなの!?」
絹を裂くような女性の声がして少女は我に返った。
(ここはどこ?
どこかの宿屋の一室。)
(あ!)
少女はそれを見て思わず、口に手を当てた。
そのベッドにはいつも見慣れた青年が女性に覆いかぶさっていた。
逃げようとする女性の髪を右手でつかみ、左手では女性のあごを押さえている。
「痛い!痛いわ!!ゼロス!!」
女性は意図も簡単に青年に捕らえられる。
静止の声に青年は聞く耳を持っていないのか、
女性の纏いし服は瞬く間に引き千切られていく。
「いやあ!やめて!!!」
「やめる?
どうしてこんな楽しいことをやめなければならないんですか?リナさん。」
少女は息を飲んだ。
見間違うことはない。
青年が今組み引いている女性は・・・
(あたしだ・・・。)
女性は必死の思いで抵抗を続けたが、男性の力にかなう筈もなく・・・
彼の手は女性のけして大きくはない乳房の片方を握り締めていた。
そして、口に含む。
恐怖の顔一色の女性。
いえ、あたし。
これから先に起こることを考えると恐ろしくなった。
「助けて!ガウリイ!!」
女性の・・・少女の口から出てきた言葉は青年の名前ではなかった。
闇を纏った青年は、はっと顔をあげると、
その瞬間、あの穏やかな笑顔は悪鬼のごとき形相へとかわり、
その瞬間。
彼は私を・・・
私の体を千千に引き裂いたのだった。
少女のただの肉の一片になったものを
悪魔はそれをすべて食べつくしたのだった。
後に残るは少女の血の海。
少女は動けなくなり、その場に崩れ落ちるまでの間、
何度もそれを見た。
何度も繰り返される自分の殺害現場をまるで夢でも見るかのように浸っている、恍惚の笑みを浮かべる青年。
少女は意識を手放した。
作品名:現実と欲望と天国の間 作家名:ワルス虎