【Livly】誰も知らない物語
「ああ」
リーダーは言う。
「かまわないぞ」
弾けたように、ルチルが顔を上げる。
その表情は「なんで!?」と言わんばかりだった。
「と、ともだちが」
聞かれてもないのに、理由を述べ始める。
「ぼくの、ともだちが・・・リーダーはどんな人って」
立ち去ろうとしていたリーダーは振り返る。
「だから、ぼくは言ったんだ。すごく強くて、かっこよくて、みんなをまとめてるすごい人って!」
リーダーは小ばかにするように口元を歪めたが、それに気づかずルチルは続けた。
「でもね、サファ・・・ともだちが聞いてきて、ぼく答えられなかったの。『モノクロ』は何をしてるチームだ、って・・・ぼくも、よくわかんなかったの。
よくわかってれば、もっとチームのみんなの役に立てたのかなあ」
「お前が役に立つ?笑わせるな」
リーダーは言い放つ。
ルチルはまた、首をかしげた。
「『モノクロ』なんて大したチームでもなんでもねぇよ、ただのゴロツキが好き勝手に集まって、騒いでるだけだ。お前だけで何が変わる」
ルチルはいてもいなくても同じ存在だった。チームの役に立つわけでもない。
それに、リーダーは「モノクロ」がチームとしてこれから廃れていく運命しかないことに気づいていた。
暴れん坊で我侭な連中の集まりだ。
ルチルは必要ない、しかし、他のみんなが必要になるわけでもない。
気づいたら強い自分に寄って来ていた、あいつらはそんな連中ばかりなのだから。
そんなルチルの顔にはショックの色がありありと浮かんでいた。
「そ、そっかあ」
だがわざと笑顔を繕って言った。
「今までありがとっ、リーダー!」
手を振る。
もちろんリーダーは振り返すわけがない。
馬鹿な奴が一人減っただけ。
その後姿に、リーダーは言った。
「最近、巨大なモンスターがこのへんをうろついてるそうだ」
ルチルは、背中に冷水をぶっかけられたかのように、息が出来なくなる。
心臓が貫かれたようだった。
「お前にモンスターの匂いがする」
どきどきした。いや、どきどきなんてものではない。
死んでしまうのではないか、と思うほどに心臓が高鳴る。
だが、リーダーは気づいていない。
このときは、まだ。
「気をつけろよ」
珍しく心配の言葉をかけただけだった。
ルチルはそれにほっとして、また笑って見せた。
「だいじょーぶ、モンスターなんて見たことないから!」
最近のルチルは、ずいぶん嘘がうまくなっていた。
作品名:【Livly】誰も知らない物語 作家名:夕暮本舗