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【Livly】誰も知らない物語

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危機


ルチルの怪我を、モノクロの連中はからかったが、ルチルは何も言わなかった。
いつものようにへらへらと笑わず、ただ塞ぎこんでいるだけだった。
その姿を見てみんな不思議がったが、リーダーは何も問わなかった。
興味がないわけではないが、ルチルがああ見えて筋金入りの頑固であることを知っていたので、きっと尋ねても答えないだろうと思ったからだ。


ルチルはあれから何日も待ち続けたが、島には前と変わらない時間が流れるだけ。
あれは夢だったのだろうか、と思ったくらいだった。
それでも怪我はなかなか治らず、それだけが現実だったという証拠になった。
ルチルは待ち続けた。それしか、出来なかった。待つという行為はやたら時間を長く感じさせることがわかった。


一方、ジョロウグモは生き延びていた。
しかし、前よりも傷は増えている。
逃げ回って逃げ回って、必死に生きていたのだ。
彼女にとって、リヴリーは憎むべき存在だった。自分たちの餌であり、天敵。
それ以上でも以下でもなかった。
この前見たピグミーは、あまりにも異常だった。
攻撃するわけでもなく、自分に歩み寄ってきたのだから。
何かの間違いだと思おうとした。最近、そればかり考えている。

そのときだった。
彼女に稲妻が落ちる。
振り返ると赤いブラックドッグが吼えていた。
リヴリーという生き物は、無差別に彼女を襲った。今回だってそうだ。
ジョロウグモは逃げ続けた。必死に、走り続けた。
しつこい。
ブラックドッグは、どんなに移動してもついてくる。
弱った体も限界が来ていた。彼女はだんだんと混乱していった。
本能がなんとしてでも生きることだけを求める。安全な場所を。
自分を守る安全な場所を。