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願い事はひとつ。〈雪降る街で、そっと優しく・・・UP!〉

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「あんたを人間によ。」

え!?

「うむ。
 その願い、確かにこの獣王ゼラス=メタリオムが聞き届けた。」
言うが、早いか金髪の美女の両手から黄金の光が溢れ出すと、その光はたちまちに魔族の青年の身体を包み込んでいた。

ゼラス様!うわーーーーーーーーーー・・・・

青年の身体に黄金の色の光は飲み込まれると、青年はその力に耐えられなくなった。
その頭をがっくりと落とすと、両手と両膝を床についた。

金髪の女性は少女に向かって、言い放った。
「リナとやら、そなたの願いは叶ったぞ。」
そして、その金髪の美女は霧のように消えて行った。
「まさか・・・本当に・・・」
少女は青年を心配して駆け寄る。
「ゼロス!大丈夫!?」
青年は、劇的な体の変化に体力を失ったのだろう。
息が少し上がっており、胸に手を当てていた。
そして、少し頭を上げ、栗色の髪の赤い瞳を真剣に見ていた。
「リナさん・・・僕はどうやら本当に人間になったようです。
 今は、もう僕にはあなたの感情を読み取る力がなくなった。
 あなたの願いは・・・『僕を人間に・・・?』なぜ・・・?」
そして、少女は青年に肩を貸すと、彼の身体を支えながらベッドへと座らせた。
「僕にはわからない。」
青年の不安げな様子に、少女は苦笑した。
「ゼロス。ごめんなさい。
 あたしは、あんたの言うとおり、とても欲張りな人間ね。」
そして、少女も青年の座るベッドの横にそっと座る。
ベッドは二人分の体重を持ち、ギシっと音を立てた。
「ねえ、未来は誰もわかりはしないじゃない・・・?
 あたしの欲しい未来は自分で叶えることにしたの。
 でも、まさか・・・本当に、願ったことが叶うなんて思ってもみかったわ・・・。」
そして、少女は少しの間黙っていた。
青年も少女の口から次の言葉が出てくるのを待った。
すると、少女は意を決したように話し始めた。
「あたしの願いを叶えるには、まず、始めに素敵な恋愛をしなくちゃ!
 あたし、あんたって決めてたの。
 ガウリイと別れ、一人旅をし始めてから。
 自分の気持ちに気がついていたから。」
そして、少女は青年の紫の瞳を覗き込んでいた。

「もし、あんたさえよければあたしの人生に協力してくれる?
 人間になったゼロスさん?」

少女は、その小さい手を青年の前に差し出していた。
人間は儚いが、今の青年にこの少女の小さな手は希望を見出せた。
青年は横に座っている少女を見ると、魔族であったときと同じように紫の双眸を光らせて笑い、
その手を取り、強く握り返した。

そして、すうっと。
彼女の耳元に口を寄せ、面白そうにささやいた。

「そして、次には二人の子供ですね?
 あなたがお望みとあらば、僕は惜しまず協力します。」






それはまだ、早ーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!






少女の大きな声が深夜の安宿中に響き渡っていた。

人間になった青年は、決して後ろ向きな人ではなく、一人の強い意志をもった男だった。



***



豪奢な椅子に座っている金髪の美女は、赤い液体の入ったグラスを傾けその様子をアストラルサイドから見ていた。

これで、よかったんだな。ゼロス。

大切な短い人生をその女と分かち合っていくがいいだろう。
ま、この私の人生はかわいいお前がいなくなっては、少々つまらなくなるがな。

ニッと、妖艶に美女は笑い、グラスを飲み干した。

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『願い事はひとつ。』をここまで読んでくださってありがとうございました。
今回はとてもとても、ハッピーエンドでした!あ〜よかった!私にもハッピーエンドが書けました!
私が、割とシリアス・切ないストーリーが好きなため、こういう話を考えるのがとっても困難でした。
でも、みんなが幸せになれる話って、本当は一番すてきですよね。
今回の話けっこう、リナちゃんの方からの逆プロポーズでしたねw
現代は女性の方が積極的なんです。

ちなみに、死ぬときに、自分の慣れ親しんだベッドがいいと思うのは、私が看護師として、たくさんの患者様を看てきて、「病気であっても家に帰りたい。帰らせて欲しい。」と皆さん一様に仰るからなんです。この言葉は私の胸にとげのように引っかかって今でも取れません。

では、また、次の作品で。