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願い事はひとつ。〈雪降る街で、そっと優しく・・・UP!〉

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その後の話≪雪降る街で、そっと優しく・・・≫


夜の帳が下ろされた頃。
さらりとした黒髪を肩で切りそろえられている青年は、この寒い冬の日のために寝るベッドの準備をしていた。
今は冬真っ盛り。
この街の冬は本当に寒いのだ。
宿の窓を覗けば、外は一面銀世界。
先ほどまで満月が出ていたので、その光を受け積もった雪がキラキラと光沢を放っていた。
しかし、今はもうチラチラと小雪が降り始めている。
「ねぇ、リナさん。
 また雪が降り始めましたね。」
宿の少し大きめの窓の前に立ち、ベルベッドの生地のシックな赤いカーテンを右手で少しつかんで、彼は外をそっと見つめて話した。
「ん?
 そうなの?ま〜た明日いっぱい雪が積もっちゃうわね〜。」
その声に反応して、ベッドの中からひょいと顔を出した栗髪の少女が元魔族の青年を見て言った。
「明日は、あたしのファイアーボールが活躍しそうね!」
そう言って、不適な笑みを浮かべ。
ふっふっふーと笑う少女を張り付いた笑みで青年は見た。
「確かに・・・雪といえども、あなたの前に立ちふさがることはできませんねぇ。」
すこ〜し嫌味も控えめに(あまり言い過ぎると少女に絡まれてしまう恐れがあるため)、黒髪の青年は話し、その赤いカーテンを閉めた。
その時に、青年の後ろの暖炉で、しゅんしゅんとやかんに入れた水が沸騰する音がちょうど聞こえてきた。
その音に気がついた彼は、その暖炉のほうまでゆっくり歩いて行って、この沸騰したお湯をアルミ缶の中に注ぎ、それをタオルで包んでベッド中に入れた。
ちょうど、布団をめくると少女の白い足先が見え、その近くに置いた。
冬には本当に、人間には湯たんぽが必需品だ。
(そんなこと、人間になるまでは知りませんでした。)と、彼は思った。
魔族でいた頃には、自分の体に重力なんて感じることもなかったし、もちろん暑さ寒さもほとんど無縁の体を持っていた。
ところが、今はどうだ。
すべての環境に自分の身体は影響される。
(人間の体は、本当に厄介にできていますね。でも、感受性が強いといわれれば、そうかもしれないです。)
色々なものを感じ取ることができるのだ。この身体は。
いいものも悪いものも。
しかし、納得することにした。
なんにせよ。
いくら魔族だった頃の自分を懐かしんでも、あの頃は還ってくるわけがないのだし。
今の環境でも十分に納得している。
まさか、昔の自分ならこんなちっぽけな少女の旅に任務意外では付き合うはずもなかっただろうから。
青年は手を自分の顎に当て、小さく笑った。
そんな様子の彼を栗色の髪の少女は布団の間から上目遣いで見ていた。
「さあ、寝ましょうか?
 明日はまた、この街の神殿に出向いて魔道の研究をするんでしょう?」
そして、青年も少女の横たわるベッドの中へとするりと入った。
「きゃ!冷たい!」
少女の足に青年の冷たく冷え切った足が当たり、彼女は足を引っ込めた。
そして、少女は恨めしそうに青年を見た。
「あんたの足が入ってきちゃ〜せっかくあたしの体温で暖めたベッドも冷たくなっちゃうわ!」
彼はそんな少女をちらりと横目で見ると、魔族の頃と変わらないその張り付いた笑みで、彼はくすりと笑った。
そして彼は少女の前髪を撫でながら、優しい声音で話した。
「大丈夫ですよ。
 今湯たんぽを入れたんですから。
 その内に温まります。」
黒髪の青年は上半身を起こしたままの状態で、ほとんど布団の中に隠れてしまっている少女を見下ろした。
本当だ。
二人の足は温かさを求めてベッドの中を動き、湯たんぽにある近くの場所で落ちついた。
青年は上半身を起こしたままの状態で、ほとんど布団の中に隠れてしまっている少女を見下ろした。
「ほらね。」
少女は青年を見上げた。
見ると、青年の後ろの小さなテーブルの上で、3本のろうそくの火が揺れていた。
「ゼロス。あのね。あたしね・・・
 今は魔道の研究をしているんじゃないのよ。
 私が知りたいのは・・・ロード・オブ・ナイトメアのことよ。
 もっと、根本的な部分。
 でも、そのことを知ることは魔道の研究に繋がることね。」
そう、少女は青年につぶやいた。
「魔道のことだけじゃないの。あたしが知りたいのは。」
つぶやいた彼女の赤い瞳が意外にも真剣なものであったので、魔族だった青年は、はっとして、少女を見つめた。
「こんな雪深いところまで尋ねて来て、何の研究をしているかと思いきや!
 あなたときたら・・・また、知ってはいけないものについて研究していたんですね・・・。」
そう言って、青年は目を細めた。
その言葉に反応して、少女は青年にを少し睨む。
「誰が、ロード・オブ・ナイトメアについて知ってはいけないなんてルールを作ったの?」
すると、ムッとした少女の口からそんな質問が返ってきた。
その様子に、青年はぎくっとした。
(いけない。またうっかり、リナさんに絡まれることを言っちゃったんでしょうか?でも、一体どこに絡まれる要素が!?)
「い・・・いえ。」
コホンと咳払いを行い、
「だ・・・誰がルールを作ったとかそういうことはないと思うんですが・・・
 でも、世界の根本を知ることは不幸に繋がると思いませんか?
 知らないほうが、時にしあわせでいられるかもしれない。」
元魔族の青年は、少女のご機嫌を損ねないようにと慌てて弁解をした。
そんな様子を見て、少女は彼の右手を左手で握ってきた。
その暖かさに彼は、どきっとする。
「ねえ、ゼロス。
 あたし、思ったのよ。」
「なんです?」
そして、元魔族の青年は少女の赤い瞳を見た。
「あんたたち魔族の制約について。」
「僕たちの制約??」
そして、少女の赤い瞳の視線は青年から天井へと移動した。
「ねえ。この世界にどうして神と魔とそして、その間に位置する人間が、いることをあんた考えたことある?」
そんな質問を唐突に投げかけられ、青年は眉をひそめた。
「さあ。わかりません。
 僕は、今は人間だが。
 生まれたときから、僕は僕の形を呈し、魔族として存在していた。
 自分の産みの親である獣王様や他の魔王様たちの指示に従うことこそ、僕の存在意味だったのですし・・・。」
そう、話した。
なぜか、それ以上考えてはいけないことではないのかと、魔族という自分を構成するものに、プログラミングされているかのようだったのを思い出した。
「そして、なぜか僕たちはいつの時代も神と争いっていた。
 長い長い間。
 常に人間と・・・
 いえ、この世界のすべてのものとともに、母の御胸へ還る衝動に駆られていましたし。
 ですから・・・」
元魔族の青年が、悩みながらもその先を続けようとしたときに、少女の手が青年の口元に伸びてきて、話し続けることを拒否した。
「でも、おかしいと思わない?ゼロス。」
「え・・・?」
「あたし、考えたの。
 神は魔族みたいな制約がない。
 神々に、必ず、上の言いつけを守らないと滅びるなんていうルールはないのよ。
 でも、魔族にはありすぎるのよね。そういうルールが。」
そう言って、少女は自分の考えを話し始めた。