究極の選択
「……リナリー」
そばで書類を見ていたリーバーさんが顔を上げた。
わたしは報告をやめてリーバー班長を見る。兄さんも一緒に。
「セクハラは訴えていいんだと思うぞ」
「セクハラッ?」
兄さんの手の中で紙が怒声と一緒にグシャッと音を立てた。
「リリリリリリリナリィィィーッ! 何を言われたのっ?」
「違う、違うの。そうじゃなくて」
「落ち着いてください、室長」
困ったことに、兄さんが興奮し出した。
「僕のリナリーにふらちなことをささやくとは! ラビを呼べぇーッ!」
「兄さん聞いて。違うったら」
「今のあんたの前にゃ誰も出せませんて!」
机の上に立ってわめく兄さんを私は片側から、リーバーさんがもう片側から押さえ、引きずりおろす。私は急いで兄さんの耳に怒鳴った。
「そうじゃなくて、誰でも同じだ、って言われたの!」
ふたりの動きが止まる。
「は?」
「へ? ……ああ」
しばらくしてリーバーさんがぎこちなく頭を下げた。
「すまん、リナリー」
「いいえ」
謝る必要があるのは私にじゃないと思うんだけど。この場にいなくて知らないんだから、わざわざ教える必要もないし、謝る必要も今はないけど。
「ふーん、誰でも一緒ねぇ……」
椅子に座ってカップから一口、兄さんは言った。
「ちょっとアレン君とラビを呼んで」