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一リカって良い響き

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 彼は、ずっと好きな人がいた。
 遊園地から自分が勝手彼を拉致った時に彼を追ってきたチームの中の、マネージャーの女の子だった。
 その子は女の自分からみても、可愛くて、女の子らしくて、女子力とか高そうで、いかにも男に受けそうな感じの子だった。
 ガサツな自分と比べるまでもなく、わかりやすく「女の子」しているなぁ、というイメージだった。
 その時自分の中の彼のイメージは、「外見は可愛いし言動は結構恰好良いのに、へたれ的なところのある少し残念な感じ」とかそんなだった。
 だけどその子の前でだけは、なんだかとても凛々しくて優しそうで、二人で話してるのを見ると、自分には勝てないと思えた。
 それだけの、彼の気持ちが目に見えてあった。

 その子のことが大好きな彼。
 自分が本当に心から、大好きだと思ったのはそんな彼だった。
 無条件にその子だけを一途に思って、聞くとその子のため(だけではなくても)に外国から遥々日本まで来て、そこで恋愛しようとしている彼。
 ほかの男が好きなその子を、それでも好きでいた彼。
 
 自分はそんな彼が好きで好きでたまらなかった。

 やがて彼は、そう時の経たないうちに、その子に告白をしたという話を聞いた。
 当然別に好きな子のいたその子は、彼の告白を断った。
 そのことについてとやかく言う資格は自分にはないし、その子はその子で自分の気持ちがあるのは当り前だけど、自分はすごく悔しかった。
 彼を断って、彼はきっとすごく傷ついたし、その子も悲しかっただろうけど、きっとそれすらも彼を苦しめる要素になっただろう。
 悔しかった。
 けど同時に、ほっとした。
 彼が取られなくて、よかった。
 自分が、頑張ったらどうにかなれる可能性が増えたと思った。

作品名:一リカって良い響き 作家名:かなどめ