エンジェル参戦
「やめろ!」
シュラは怒鳴った。
この声でアーサーの動きを止めたかった。我に返り、冷静になってほしかった。
けれども、止めることはできなかった。
シュラは暴れる。精一杯、抵抗する。
どうにか逃れようとして、しかし、逃げられず、強い力で押さえつけられる。
身体を何度も壁にぶつけた。
上一級祓魔師であるのは同じだが、実力差がある。
かなわない。
そんなことは、わかっている。
でも、あきらめることはできない。必死で抵抗を続ける。
ふと。
「シュラさんを放せ」
声が聞こえた。
「さもなければ、撃つ」
強く冷たい声が部屋に響く。
雪男の声だ。
アーサーが動きを止めた。
ただし、シュラを捕まえたままで、その手の力はゆるまない。
そのアーサーの向こう、部屋の出入り口の近くに、雪男が立っているのが見えた。
雪男の手には拳銃があった。
銃口はアーサーの後頭部に向けられている。
「……オレに気づかれないうちに背後に立つとは、やはりサタンの落胤だからか」
「単にあなたが間抜けだっただけだ」
自分より年上で立場も上である相手に、雪男は辛辣な台詞を放った。
その声は、やはり、冷たい。
だが、怒りを感じる。
「オレが間抜けか」
アーサーは自分に銃口が向けられていることに気づいているだろうに、あせった様子は微塵もない。雪男を振り返りもしない。
「オレの背後に立ったぐらいで、オレに勝ったつもりでいるとはな」
張りつめた空気の中、アーサーは軽く笑った。
次の瞬間。
アーサーが消えた。
その移動を、シュラは眼で追うことができなかった。
動きが速すぎた。
しかし、アーサーの姿が見えるようになる。
シュラは思わず、鋭い声を発した。
「雪男……!」
アーサーが雪男の背後に立っていた。