投げられた指輪
それはまるで、人生の早送りを見ているようだった。
栗色の髪の少女は人懐っこい顔でよく笑い、きままに生き、
その旅に色々な人と知り合った。
高らかな笑い声を持つ豊満なバストの女性。
セイルーン国の正義オタク王女。
キメラにされ、その体を元に戻すことを宿命付けられた青年。
いい性格をした黒髪の巫女。
竜族の箱入り娘。
奇妙な小動物。
そして、少女が望んでいなくても倒さなくてはならなかった哀れな魂たち。
そんな中、この魔族の青年も微妙な立ち位置で、少女と旅をした。
そして、みな通り過ぎて行った。
でも、常に少女の傍らには金髪の碧眼を持つ長身の男性の姿があった。
やがて、二人は旅にピリオドを打ち、
人知れず、町はずれでこの家を買い暮らし始めていた。
それは自然な出来事だった。
旅をしていたころとはまったく正反対の生活。
静かで暖かな生活だった。
金髪の青年は近くの町で傭兵をしたり、少し遠くの町までの護衛を引き受けたりする仕事を請け負っていた。
少女は例のごとく、怪しげな魔法を研究し。
魔法薬やアクセサリを作ったりしては、大きな町の魔法屋に売って大金を得ていた。
一年も経てばその暮らしにも慣れ、少女は研究の傍ら、庭の手入れが趣味になっていた。
この広い庭は元より生えていた薔薇の樹と、少女が植える薬草、その他の美しい花々で品よく彩られていた。
少女はその生活に満足していた。
薔薇の花が美しく咲き誇るちょうどその頃、金髪の青年は護衛の依頼で少し遠くの町まで出払っていた。
いつもの何日間かの遠出。
少女は青年の帰りをいつものように待っていた。
その家に、珍しく人が訪ねてきたのだった。
呼び鈴が鳴るので、少女は急いで扉を開けると、
そこには大輪の花が咲いている花束が少女を出迎えた。
驚き少女が止まっていると、
「結婚おめでとうございます!リナさん!」
花束が横にずれあの長い黒髪を持っている女性が満面の笑顔を覗かせた。
あ!っとした少女も見知った顔に笑顔になった。
「シルフィールじゃない!」
そうして、女性はその白い花の咲く花束を少女へ渡した。
「ありがとう!
いらっしゃい。
どうぞ、あがって!」
黒髪の女性を少女は家へと招きいれた。