笑顔
チャイムの鳴る音がする。
先生の怒鳴り声がする。
先生のため息が聞こえる。
数式が聞こえてくる。
・・・授業始まった?
「ねぇ皆、提案なんだけど。今日は皆でサボりましょうよ。」
「「出席日数ヤベェ」」
「あらぁ残念ね~。」
「仕方ないわね。」
「また今度の機会だな。」
「お前等授業しっかり聞けよ。」
「日頃の行いには注意しとくもんだな。」
「じゃあな。」
ゆるゆると抱きしめあってた腕を解き放ち、
不幸というか自業自得な二人を残してドアに向かって歩き出す。
「先生~腹痛なので帰りまーす。」
「先生ー鼻が折れたんで帰ります。」
「あー先生ー、俺明日からってことで。」
「先生、俺は・・俺は・・・頭痛だ!!」
「先生、急用なので帰りますね。」
「先せーい、なーんか元気ないんで帰るな。」
「おいっっっ待てっ!!!俺もサボるぞーーー!!!!!」
「・・・おい、モンキー・D・ルフィ、先生の前で堂々と何て言った?」
「・・・・あ。
あ゛ぁぁぁーーーーーーーーーーー!!!!」
「阿呆。」
サボリ組は学校から少し歩いたところにあるファミレスに入った。
完全に学校であろう時間帯だが、見た目がハデな面子なのと空いているということもあり、注意されることは無かった。
「アイツ等、大人しく授業受けてるかしら。」
「うふふふ、相当叱られてるんじゃないかしら。」
「わっ悪いことしちゃったかな・・・・」
「大丈夫よチョッパー、アイツ等の自業自得なんだから。」
「サボリの件はスルーか。」
「ところでナミさん、さっきの願いって?」
「そうだったわ、実はね私たちは願い事をしたの。あの海賊だった時に―――
それはサンジが死んだ後のこと、
サンジが死に悲しみに負けそうになったが麦わら海賊団は立ち止まらなかった。
全員が前を向き、涙を流すことはなく、進み続けたのだ。
そしてサンジの願いを叶えるためにオールブルーへと向かった。
時間がかかるだろうと思っていた、何しろ幻の海。
だが、到着するのに時間はかからなかった。
導かれたかのようだった。
目の前に広がる深い青色。
偶然なのかオールブルーの頭上に広がるのは雲一つ無い青空。
青空が海の青をより深いものにし、海の中で泳ぐ魚の鱗に太陽の光が反射し、海面がキラキラと輝いている。
時折、魚が飛び跳ねその水しぶきで小さな虹が出来る。
本当に夢のような海。幻なのではないかと自分の目が信じられなくなるほど美しかった。
釣りだぁーーーと叫ぶ船長に続いて釣りを始めたが、釣った魚は全部違う種類。
1匹とて同じ魚を取ることは無かった。
その中には今まで見たことの無い魚、見覚えのある魚、懐かしいよく知る魚がいた。
そして全員が同じ思いだった。
ここにサンジの墓を立てようと。
この美しい場所に、全てのコックの憧れの地に、夢の地に、世界一のコックの墓を。
墓は海列車の線路の技術を応用してフランキーが作り上げた。
完成の宴をしていると一斉に魚たちが飛び跳ねた。
月明かりに反射した鱗は昼間とはまた違う表情で光輝き、暗くなった海は空との境界線を無くし、船は星が輝く夜空に包み込まれたようだった。
サンジの墓の周りには海蛍が集まり、優しい光で包み込んでいた。
まるでサンジのことを歓迎しているかのように。
そして、また麦わら海賊団は進みだした。
そうして手に入れたのは『世界一』という称号だった。
全員で全員の願いが叶う瞬間を共にした。
その後はそれぞれが別行動をとることも多かった。
だが、約束をしていたのだ。
再会の約束を。
オールブルーから少し離れた場所に島がある。
その島にはこういう言い伝えがあった。
いつか訪れるであろう転生時に巡り合いたい人の傍で眠る
願い願い願えばそれは必ずややってくる
そうして巡り合えたその時は、今世の記憶が蘇る―――
その島でその言い伝えは既に風化しつつあった。
だが、ルフィを始め、全員がその話を信じた。
すぐそこにはオールブルーが広がっている。
また巡り合いたい仲間が眠っている。
巡り合いたい人の傍で眠る―――
何か確信のようなものを感じた。
麦わら海賊団のクルー達は全員がこの島に舞い戻り最後を遂げた。
オールブルーがある方角を見つめるように全員の墓が建てられた。
サンジの墓には麦わらの海賊旗、海賊王の海賊旗が結ばれた。
ナミの刺青のマークが彫られ、ウソップのゴーグルがかけられた。
ロビンが書いた本が置かれ、チョッパーの帽子が置かれた。
フランキーの手によってそれらはしっかり固定された。
そしてフランキーも愛用してきた工具を置いていく。
最後まで墓を守り続けたゾロは、3本の刀を墓に突き刺した。
そして最後の一人ゾロの墓を作り上げたブルックは歌を捧げ、ラブーンの元へ旅立った。
再会を誓う。
またいつか必ず出会おう。
願おう。
全員で――――
俺たちは永遠に仲間だ――――