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こらぼでほすと ケーキ5

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「アスラン、ちょっといいかい? 」
 ヒルダは、常識派のアスランに取り成し方を相談する。ヘルベルトとマーズも、あちゃーという顔で、本堂のほうを眺めているだけで妙案なんて浮かんでいない。
「・・・それは・・・難題だなあ。ラクスのことだから、絶対に退かないだろうし、ニールも受け取らないでしょうね。」
 説明を聞いたアスランも、眉間に皺を寄せた。どちらも退かないだろうことは想像がつく。ここで、トダカ辺りに出張ってもらわないと、とんでもないことになりそうだ。ここで仲違いが決定的になってしまうと、どちらも、そのまま関係を切るだろう。そんなことになったら、ニールは『吉祥富貴』から抜けてしまう可能性だってある。
「さて、どうしたもんだろうね。」
「三蔵さんは? 」
「ラクス様がいらっしゃった時に逃亡したまんまさ。」
 だから、ここには年少組しかいない。仲裁できる人間はいないのだ。ヒルダたちとしては受け取ってくれればいいと思っているが、ニールの言い分もわかるので、どちらの肩も持てない。それは、アスランも同じ意見だ。まあ、さすがに八桁の高額時計は、やりすぎだろう、とは思っているが。
「とりあえず、形だけでも返品してもらいましょうか。店のほうへ預ける形にしておいて、後日、受け取ればいい。」
「けど、肝心のニールは受け取らないんじゃないのかい? 」
「今は無理でしょうね。俺だって、それをキラが贈ってくれるって言っても、ちょっと考えます。」
 何かあって、ニールの気持ちが変れば受け取ってくれるかもしれないが、今の現時点では無理だろう。まだ本堂から聞こえる口喧嘩は継続している。歌姫様も大声を張り上げて反論しているし、ニールもキレているから大きな怒声だ。預ける算段だけしておくか、と、アスランが本宅へ連絡して、領収書を寺へ届けてくれるように手配した。



「ママのために選ぶのは、そんなにいけないことですかっっ。」
「値段を考えろっっ。こんなもん、普通に考えて選ぶもんじゃねぇーぞっっ。」
 自分の選んだものを全否定されている歌姫様は、腹が立って怒鳴り返している。いつのまにか気付かないうちに泣き叫んでもいるのだが、それでもママは折れる気配は無い。
「お似合いのものが、たまたま、それだったんですっっ。」
「おまえさんが、こんなものを贈ったら、他のも追随しやがるだろーがっっ。俺は、そんなもん貰いたくない。おまえさんたちが働いて稼いだ金を浪費するのなんか認められねぇーってんだ。」
「浪費じゃありませんっっ。ママへのプレゼントです。」
「やりすぎだ。いくら似合っても使えないものはいらない。」
「ですから、普段使いにしてくださいと申し上げました。」
「こんなもん、できるかぁーっっ。俺は、おまえさんの誕生日に返せねぇーようなもんは困るんだ。どうして、それがわからない? 」
「返してもらっています。ママが、私にしてくださることで、私は満足です。モノで返してもらう必要はありません。」
「おまえだって、俺の世話してくれるじゃねぇーかっっ。あれで、俺がやってるのとチャラだろ? この分はどーすんだっっ? 」
「だって・・・ママに似合いそうだから・・・」
「ああ、それは嬉しいさ。でもな、ラクス。俺、おまえさんにプレゼントするにしても、こんだけのもんは逆立ちしたってできない。こういうのは、双方が同じくらいのものを贈るのがルールだ。ルールを無視すると、ただの施しになっちまうんだっっ。」
「なんてことをおっしゃるんですかっっ。私はママに、そんな気持ちで用意したのではありませんよっっ。私は本当にママに似合いそうで綺麗だったから選んだんですっっ。どうして、わかってくださらないんですかっっ。」
 どっちも本気だし折れるつもりもない。ヒートアップするだけだから、誰も口を挟めない。宇宙で一番高名な歌姫様という部分を無視しているから、ニールは叱っている。その部分を考慮してくれれば、贈り物として成立するのだが、ニールには、そんな配慮はないし、ラクスのほうも、ただ綺麗で似合いそうだからつけてほしい、という気持ちだけだから、値段なんか考えなかった。だから、どちらも自分の考えは曲げられない。がんがん怒鳴りあっているのも珍しい光景だ。基本的に歌姫様は怒鳴ったりしないし、ママも事を荒げるタイプではない。それが衝突しているのだから、ものすごく怖いと、回廊にたむろしているものたちは固まっている。子猫たちでも、あんな親猫は、なかなか見られない。刹那は以前、衝突しているが、その時も、あんな感じだった。ただ、あの時は親猫が、自分の非を認めてくれたから、ここまで到らなかった。
「ママ、大丈夫かなあ。昨日も昼寝してねぇーし、あんなに叫んだら酸欠にならねぇーかなあ。」
 日頃の状態を知っている悟空が、ぽつりとそう言って回廊を一段昇る。あんまり急激に体力を消耗させると貧血を起こしてひっくり返るから心配だ。怒鳴り声が、ちょっと止んで、どすっという音がした。慌てて悟空が本堂へ走りこむと、やはりママは床に両手をついている。
「ママッッ、もうやめなよっっ。ラクス、おまえもっっ。」
 はあはあ、と、どちらも息が切れている。支えようとしたら腕を払われた。
「悟空、あっち行ってろっっ。このバカわんこは躾けとかなきゃダメだ。」
「もうやめないとさっっ。貧血起こしてるだろ? 横になりなよっっ。」
 悟空も退かない。背後から脇に手をやって、ずるずると脇部屋に引き摺る。こういう場合の救助は、悟空の仕事だ。
「ラクス、一時休憩っっ。ストップッッ。」
 キラも乗り込んできた。そして、ラクスにペットボトルのミネラルウォーターを手渡す。涙でどろどろの歌姫様は、格好を気にする様子もなく、水を飲む。
「落ち着いて、ラクス。・・・・それから、こっそり聞いてね? 」
 キラはラクスにしか聞こえないように、小声で何かを説明する。えっという顔をした歌姫様も、黙って、それを聞いて頷く。確かに、そうするしかないようだ。脇部屋のほうには、アスランが顔を出していた。ひーひーと息をしているニールの前に、件の領収書を指し示している。
「ニール、本宅から領収書が届きました。これと現物を持って返品してきます。」
「・・・・アスラン・・・それ、俺も行く。ちょっと待ってくれ。」
「え? 横になってないといけませんよ? 」
「・・貧血だから・・・すぐに収まる。自分の目で確かめないと・・・確証がないだろ? ・・・・」
「わかりました。では、落ち着いたら居間のほうへ戻ってきてください。待ってますから。」
 そういうことなら、それでいいだろう。本日は日曜日で仕事もないから、この後の時間も余裕がある。
「キラ、居間で待ってる。」
「わかった。ラクスが落ち着いたら、僕らも戻る。」
作品名:こらぼでほすと ケーキ5 作家名:篠義