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贈り物

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「夕食は18時となります。それまで、ごゆっくりとお寛ぎくださいませ」

落ち着いた色目の着物を着た仲居さんが、二人に向かって深々とお辞儀をして、部屋を退出した。

二人が訪れたのは、老舗の温泉旅館。

それも温泉街から少し離れた所にある、かなり広い敷地の中に建てられた由緒ある旅館だ。
大きな建物から渡り廊下をしばらく歩いて行くと、露天風呂付きの離れ部屋へと案内された。
確かに、二人っきりでのんびりと過ごすには最高の場所だ。

アムロは座卓の上に置いてあった館内案内表をパラパラと捲りながらニコニコとしていた。

「シャア、ここって凄いな。大浴場も露天風呂もあるよ。それに温泉街には外湯もたくさんある。セイラさん、よくこんな所を見つけたよな。なぁなぁ!早くどこかに入りに行こうぜ!」

待ち切れないといった表情のアムロを見ていると、シャアの顔も自然とゆるむ。

「アムロ。この部屋にも露天風呂は付いているぞ。こちらを先に入らなくてもよいのか?」
「部屋のは後だよ。いつでも入れるじゃないか。それよりも、本館の大浴場が入れる時間だからさ、ついでに露天風呂にも入ってこようぜ」

私が答えなくても、既に行先は決まっていたようだ。

「やっぱり、広々とした湯船が一番最初だよなぁ〜」

夢見心地な表情で、自分の姿を思い浮かべている。
アムロは、仲居さんが淹れてくれたお茶を飲み干すと、スクッと立ち上がる。

「あのさ、この浴衣。どれを着てもいいって言ったよな?」
「あぁ、そう言っていたな。でもサイズは確認したまえよ」

部屋の隅に置かれた木箱の中には、色と柄の異なる浴衣が複数入っていた。
アムロは襟元に付いているタグでサイズ確認しながら、どの浴衣にしようか迷っていたが、「やっぱり、コレだよな」と言って取り出したのは、藍染の総しぼり柄だった。
温泉街でもよく見かける色合いの、ごくごく普通のものだ。
シャアもアムロの傍に行き、浴衣を物色すると、一つ取り出した。

「その浴衣で良いのか?君ならこちらの柄を選ぶと思ったがな」

白地に青色で、長細い草の様な模様が描かれている浴衣をアムロの前に広げた。細い線が見ようによってはさざ波の様でもある。その浴衣をアムロに当ててみる。
ふむ、やはり白と青が一番似合うな。
シャアが無言で頷いていると、アムロに却下された。

「ああ、コレは駄目だな。貴方も浴衣を着てくんだろう?俺の好みだけでいいなら、コレでいいけどさ。この色は貴方じゃ似合わないだろう?貴方向きっていうと・・・やっぱりこの臙脂(えんじ)が一番似合うよな!・・・だけど、俺だとコイツは似合わないからなぁ。だから、コッチの無難な紺色だったら二人とも可笑しくないって思うだろ?」

臙脂の浴衣には紅葉があしらってあり、かなり粋な風合いだ。アムロの赤毛に合わない事もないが、童顔で小柄なアムロが着ると確かに浮いてしまう代物だ。
そこまで推察したシャアは、ハッと気付く。

「−−−アムロ。それは、二人で同じ柄の浴衣を着ようと言う事なのか?」
「当たり前じゃないか。遠路はるばる温泉宿に来たってのに、違うモノを着なくたっていいじゃないか」

至極、真面目な顔で、照れもせずに言いきるアムロは、シャアにその選んだ浴衣を手渡すと、自分はさっさと着替え始めた。
するとシャアは、手にした浴衣とアムロを交互に見つめながら、どうしてこんなにも私を喜ばせる言葉を君はサラリと告げてくれるのだろうと、たちまち例えようも無い愛しさが込み上げ、アムロの身体を包み込むようにギュッと抱きしめた。

「ちょっと、離せよ!着替えられないじゃないか」
「あぁ、すまなかった。君の言葉が嬉しくて、つい」

頬を膨らまして言うアムロの頬に、チュッとキスを落としてから両手を解放した。

「それでは、揃いの浴衣に着替えて行こう」



 * * *


作品名:贈り物 作家名:でびーな