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夢と思い出

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「……地球に辿り着いたのは、オイラ達にしてみれば、偶然だった。アクシデントだったんだ。メガトロンを追って」
「そうね。そう聞いてるわ」
 手をつないだまま答えるボタニカの声音は、優しかった。ラットルは、なぜか、そんなことで嬉しかった。
「コンボイは、オラクルの意志だって言った。全ては、この星に有機体をもたらすために仕組まれた運命だって」
「今更、そんなこと……何が、言いたいの?」
「……本当に、そうなのかなあって、ね……」
「ラットル?」
 ボタニカの声が、大きくなった。
「そうでなければ、これまでのことは、何だったというの?!」
「まあまあ」
 ラットルは、彼女の手を、少し強く握った。
「コンボイは、オラクルの声を聞いてた。チータスも、もしかしたら、今なら聞けるかもしれない。でも、オイラは、聞けない」
「……疑っているの?オラクルのことを」
 ラットルは、首を横に振った。
「コンボイのいうことは、信じてるよ。でもさあ……」
 ラットルは、一呼吸おいて、ちょっと口を湿らせた。閉じた瞼の裏には、かつての戦いが、そして仲間達の顔が、鮮明に映っている。
「オラクルに、聞いてみたいんだ。ここに戻って来る前にも、失った仲間達がいる。デストロンの連中も、殆どがマトリクスに還っていった。それも全部、オラクルの意志なの?……ってさ」
「……ラッちゃん」
 ラットルは、しばらく迷った。だが、再び口を開いた。
「……自分勝手な奴がいたんだ。デストロンのくせにオイラ達の司令官になりたがって、自分の思うままに戦ってあ……結局……そのまま逝っちゃった。でも、復活したソイツが、命を賭けて自分のやり方を通さなかったら、オイラ達はとてもじゃないけど、セイバートロン星には戻ってこれなかった。てことは、ソイツがこだわってたことは、全部オラクルの意志だったってことでさ……でも、それはさあ……そんなことってさあ!」
 ふと、言葉が途切れた。何を言いたいのか、自分でも分からなくなってきた。でもボタニカは、つないでいる手を強く握り返してきた。
「……そんな、風変わりな仲間がいたのね。私も、会ってみたかったわ……」
 ラットルは、いきなり目を見開いた。強制終了。ログアウト。眩むような光と共に、『今』の感覚が戻って来る。
「ダメだ!」
 ラットルは、立ち上がって叫んだ。
 ボタニカは目を丸くしてラットルを見ている。
 ラットルはボタニカの正面に回って、力説した。 
「ンなこと考えなくていいよ!アイツは、乱暴で、ワガママで、わからず屋のオタンコナスビで……ああんもう、とにかく、キミと合わないのは間違いないって!」
 その時、ラットルの頭上に、突然影が差した。
「え?」
 原因を見極める間もなかった。続いて大気を震わす大轟音が鳴り響き、ラットルの足元の地面がいきなり---ごっそり崩れ落ちた。
「えええっ?!」
 慌てて伸ばした手は、だが、何も掴まなかった。
「ラっちゃん! ラッちゃーーーーん!」
「ボタりーーーーん!!!」
 穴の淵から、ボタニカが必死に手を差し出していた。
 真っ暗な穴に落っこちていくラットルが最後に見たのは、ボタニカの、青と黄金の瞳だった。

作品名:夢と思い出 作家名:スガ