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夢と思い出

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 ガアン!と、固い金属音が響いた。
 ラットルは、腰と後頭部を、したたかに打った。
「……ってぇ~……」
 体をさすりながら上体を起こす。意外なことに、そこは、明るい室内だった。
「やっとお目覚めかよ」
 かすれたような声がした。
 顔を向けると、そこには、全身に縞模様を付けた肉食恐竜が、ダンスを踊ってるみたいに片足を上げてラットルを見下ろしている。上げた足先の向こうで、椅子がキリキリ回っていた。
「まったく手ェばっかりかけさせやがって……この馬鹿ネズミがよォ」
「ダイノボット?……てことは、オイラ死んじゃったのぉ?!」
「何縁起の悪ィこと言ってやがるんだ、あ~ン?! 寝ぼけるのもいい加減にしやがれ! しゃんとしねえと頭から喰っちまうぞ!」
 イラついたダイノボットが、ラットルを軽く蹴った。ラットルは、その時自分が、かつてのロボットモードの姿だと気がついた。真鍮色のボディに、足があった。
「ね……寝ぼけて?じゃあ、セイバートロン星は? ボタりんは?」
「テメエの腐れ故郷なんか知るかよ。その、ボタ何とかとやらもな」
「ここは、どこ?」
 ダイノボットの表情が、微妙に変化した。
「……分かんねえのか?」
 ラットルは辺りを見回した。馴染み深いレイアウトだった。
 ラットルは二、三回、頭を振った。
「探査船アクサロン……サイバトロン基地……」
 ほ、とダイノボットは息をついた。
「頭打った拍子に、記憶回路がやられちまったのかと思ったぜ」
 だんだん、現実感が戻って来た。謎の星への墜落。デストロンとの抗争。セイバートロン星には、いつ帰れるか分からない。そうだ。
(じゃあ、あれは、夢だってーの? やけにリアルだったけど)
 だが、現実をはっきり認識しだすと、反対に、リアルなはずだった今までの記憶は急速に薄れ、拡散していった。
(緑のセイバートロン星……? 戦いがあって……?)
 ラッちゃん、という甘い声と、青と黄金色の澄んだ瞳が、ラットルの脳裏をかすめた。なんだか、とても心地良かった。忘れなくないな、と、思った。
 だが、その想いも、イメージごと、ダイノボットの声にかき消される。
「大丈夫ならさっさと立てよ。今日は一日、楽しい野良仕事だぜ?」
「……ちぇっ。もー、草刈りなんて、オイラ向きじゃないっての!」
 ラットルはしぶしぶ立ち上がった。夢の内容はもう思い出せなかった。微かに残った、明確な形をとらないイメージの残滓は、無意識に沈んでいった。

作品名:夢と思い出 作家名:スガ