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君と僕との逆転話-序章-

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潮江の焦り声に立花は自分がどれだけ危なかったかを悟る。
一筋の光と共に、すぱっ、と自分の頬が切れたことを察する。
感じた痛みと僅かな血臭に自分の傷の浅さを理解し、そうして後輩に見られぬようにと親指で傷をぬぐった。
食満と潮江も後ろに下がり、飛び出そうとする七松を中在家が抑えようと腕を掴んだ。
現れた緑の忍服。明らかにほっとした表情をした四人の少年たちに、彼がこの中での中心人物だと悟る。
否、悟るまでいかない。
一年は組、皆本金吾にそっくりな、その青年はこちらの面々に視線を向けることなく自分の仲間たちの安全を確認するときんっ、と小さな金属音をたて、刀を鞘に納めた。
「焦ったな、シロ」
呟くように低い声が響く。
「すみません」
「今回は間に合ったからいいが、次はないぞ」
「っ、はい」
向けられた言葉に反省する蒼の青年。そして緑の青年はやっとこちらを向いた。
「帰還命令が出てるというのに」
ため息をつくように落とされた声。
腰に佩いた刀に手をかけたまま、緑の青年はゆっくりと全員の顔を見渡す。
先ほど感じた殺気はすでに霧散している。立花は潮江に互いだけが分かる合図を送った。
了承の返事が返ってくると仙蔵は青年の視線を正面から受け、握っていた苦無を握りなおした。
「お前は、皆本金吾か?」
全員の意識が立花に移る。
その隙をついて潮江がその場を離れたが、誰もそれに気づかなかった。
「答える義理も、理由も、ない」
かちりと刀の鍔が横を向く。
「ほう、それでは、お前は私たちをどうしようというのだ? 勝てると? この人数相手に」
風が吹いた。
ざぁ、と風が立花の髪をさらい、緑の青年の短い髪を揺らす。
一般人が見れば、ただ視線を合わせているだけだろう。事実、まだ幼い浅黄たちは互いに固まり小さくなったまま二人を見ている。
しかし、黙っているだけで立花の視線は互いの戦況と実力、相手の正体と目的を探り当てようとせわしなく動いていた。
それは勿論向こうの青年も同じだろう。
紫にあがる権利を得たものだけが分かる極小の殺気が、上級生と下級生を分けていた。
「さん」
「はい」
「二人を連れて帰還を」
「先輩を置いてなど」
「なら、お前が残っても構わん。自分がシロより役に立つと自信があるんならな」
先ほど蒼が向けた言葉よりも冷たい声音に三之助の顔が強張ったのを立花は視線の端でとらえた。
次いで仙蔵の耳に矢羽音が飛び、告げられた言葉に六年だけでなく五年も目を見開きすぐさま動けるように構える。
「あーあ、随分キツイ言い方すんなぁ」
「……トラブル吸引三人組がなんのようだ」
がさりと音が茂みから聞こえ、三人の青年が現れる。
「今回引き寄せたの俺たちじゃないもーん」
「お前たちが来れば余計に厄介ごとが増えるだろうが」
「えー、でも早駈け、戦闘、防衛、近中遠距離タイプ揃ってるのって俺たちくらいじゃん。打ち合わせなくても動けるし」
ひょろりと背の高い首に布を巻いた青年、眼鏡の雀斑顔の青年、ふくよかな体つきの良い青年。
その三人を見て、一年生の摂津がぽつりとつぶやく。
「俺たち?」
その声が聞こえたのか、布を巻いた青年がこちらをみた。
「うわぁお。霊感コンビが喚いてたのってこれかぁ」
俺が二人って超得じゃね、とあっけらかんと笑う。
今までの殺伐した雰囲気を吹き飛ばすその声に、五年の毒気が抜けた。
「じゃあ、金吾がいるなら僕は先に戻るね。行こうか」
ふくよかな青年が、浅黄、萌葱、紫の青年を促す。浅黄の少年は嬉しそうに青年に飛びつき、青年は結構な勢いがあったにも関わらず、しっかりと彼を受け止めた。
萌葱の少年は紫の青年の表情を伺いつつ、青年の後に続く。
「ここは私たちに任せて。君は二人を送り届けることをやり遂げなさい」
眼鏡の青年に促されて、ようやっと紫の青年も足を踏み出した。
「あっ、そこに隠れてるお兄さんも、追いかけないほうが賢明ですよ」
立花が身を隠している潮江に合図を送ろうとしたが、その前に青年の声が阻んだ。
「すでに森のトラップは全部発動してますし、幻術使いも、猛獣使いも行動を開始しています。貴方たちと戦うつもりは今のところないですが、私たちのリーダーが来るまでは動くことを遠慮していただけるとありがたいです」
にっこりと笑った眼鏡の青年。その笑顔のどこにも偽りはない。
見透かされているなら無意味かと姿を現した潮江と立花が矢羽音を交わす。
二人だけで取り決めた矢羽音をいくつか種類を変えてやりとりをし、視線を緑の青年三人に戻した。

作品名:君と僕との逆転話-序章- 作家名:まどか