【かいねこ】ダーリン 君と手をつなごう
「んー・・・・・・」
扉の開く微かな音に、シトロンは不明瞭な声を上げる。
密やかな息づかいと、カチャカチャと陶器が触れ合う音に、シトロンは枕に顔を押しつけ、
「めーいこー・・・・・・もう少し寝かせてくれー・・・・・・」
「あ、あの、おはようございます、マスター。メイコさんが、もう起きる時間だと」
「んあ?」
聞き慣れない声に、シトロンは目をしばたいて顔を上げた。
見慣れない少女が、緊張の面もちでコーヒーを乗せた盆を手に持って、立っている。
「ど・・・・・・どちら様?」
「え?」
「自分で連れてきたくせに」
後ろから現れた赤いドレスの女が、呆れたようにため息をついた。
「え、あっ、メイコ、おはよう」
「おはようございます。さっさと起きて下さい。朝食の後、カイトから話があるそうですよ」
「えっ、な、何事でしょうか」
カーテンに手をかけたメイコは、振り向いてシトロンを睨むと、
「彼女、マスターが、賭の景品として引き取ったんですって?」
メイコの言葉に、シトロンは勢い良く少女の方に振り向いた後、ベッドに倒れ込んで、掛け布団を頭の上まで引っ張りあげる。
「ゆ、夢!これは夢だ!!俺はまだ布団の中で、夢を見ているんだ!!」
「この馬鹿マスター!!後でカイトから絞り上げてもらいますからね!!」
メイコはぼふっと布団を叩くと、おろおろしている少女の手を取り、
「こっちにいらっしゃい。どうせ、しばらく立ち直れないから」
「あ、はい」
促されるまま、少女はメイコについていった。
作品名:【かいねこ】ダーリン 君と手をつなごう 作家名:シャオ